Research Abstract |
Ca拮抗剤によってヒト眼球常存電位(以下SP)が変化することを見出し,この応答をCa拮抗剤応答と命名した.Ca拮抗剤応答が網膜色素上皮(以下RPE)層に対するCa拮抗剤の直接作用によるかまたはCa拮抗剤による眼内血行動態の変化を介した間接作用によるのかを検討した. まずウサギ神経網膜-RPE-脈絡膜標本を室温下にてUssing型灌流装置に装置し,SPの発生母体である標本を挟む電位差(以下TTP)に及ぼすCa拮抗剤の影響を調べた.Ca拮抗剤(ニカルジピン5mg/l)を含む溶液の灌流によってTTPは変化しなかった.次にウサギにニカルジピン(0.1mg/kg)を静脈内注入してCa拮抗剤応答と大腿動脈圧の時間経過を比較し,さらに頚動脈を圧迫して網脈絡膜血流を低下させたさいのSPの変化を調べた.Ca拮抗剤応答の時間経過は大腿動脈圧低下のそれにほぼ一致し,頚動脈の圧迫によりSPは増大し,開放によりSPは回復した. 以上よりCa拮抗剤応答はCa拮抗剤のRPE層に対する直接作用ではなく,Ca拮抗剤による循環動態の変化に対するRPE層の応答である可能性が高いことが判明した.Ca拮抗剤応答には個体差が大きいことがこの応答を眼内血行動態の異常を検出するための検査として用いるさいに問題になると考えられる.
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