Research Abstract |
本研究では比較的酸化物を形成しやすく元来陶材中に多く含まれていないBaに着目し,陶材中のBa含有量の変化がチタンとの接合強さに与える影響について検討した. 試料陶材粉末は,Ba含有しない市販チタン用陶材オペーク(Titan Bond,オハラ製)にBaCO_3を加え,最終的なBa含有量が5,10,15重量%となるように調整した.接合強さは,市販のチタン棒(直径3mm,JIS第2種)の周囲に試料陶材を圧接,焼成した後,引き抜き剪断試験を用いて評価した。引き抜き試験後の陶材側破断面は,X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて分析した.また,Ba含有量よる陶材の曲げ強さ,熱膨張率への影響についても評価した. 1.チタン/陶材の接合強さは,陶材中Ba量の増加とともに有意に大きくなった. 2.破断は,焼成によって成長したチタン酸化被膜とチタンとの界面,もしくは酸化被膜内で起った. 3.陶材の破断面では,酸化チタンおよびBa,Ca,Si等の存在がXPS分析で確認され.同部にこれらの元素から構成される複合酸化物層が生成していることが明らかとなった. 4.曲げ強さは,Ba含有量の増加につれて大きくなる傾向を示したが,統計学的に有意の差は認められなかった.このことは,Ba含有によって陶材の強度は低下しないことを示している. 5.熱分析の結果,各陶材試料のガラス転移温度はBa含有量に関係なく一定の480℃であった.熱膨張係数は,すべての試料でガラス転移温度以下では10×10^<-6>/℃,ガラス転移温度以上では30×10^<-6>/℃であり,Ba含有の影響は認められなかった. 以上の結果から,本研究におけるチタン/陶材の接合強さの向上は,チタン酸化膜内にBaが拡散して複合酸化物を形成したためと考えられ,陶材に対するBa添加はチタンとの接合強さの向上に有効であることが示された.
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