Project/Area Number |
08J00672
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Philosophy/Ethics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 哲生 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2008 – 2010
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2009: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2008: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 知覚 / 『知覚の現象学』 / 健忘失語症 / 『ヒューマニズムとテロル』 / マキアヴェッリ / 『弁証法の冒険』 / フッサール / 空想 / メルロ=ポンティ / 『ソルボンヌ講義』 / 児童 / 病理学 / 幻影肢 / 高次脳機能障害 |
Research Abstract |
今年度はDC2の二年目である(平成21年3月の満期退学に伴いPDに資格変更)。研究課題は「メルロ=ポンティに語ける知覚概念の再考」であった。メルロ=ポンティの哲学において、「知覚」という概念は最も重要な概念の一つである。今年度は、メルロ=ポンティが提示する知覚概念の病理的な側面を研究した。本業績報告書作成者は研究業績として、以下三点の論文を執筆した。最初に、メルロ=ポンティが『知覚の現象学』で分析した健忘失語症の症例に関して論文(「メルロ=ポンティとゴルトシュタイン」)を執筆した。ドイツの脳医学者であるクルト・ゴルトシュタインが分析した高次脳機能障害における失語の症状は今日の哲学および医学分野においてもしばしば議論が行われている。ゴルトシュタインが失語症患者の位置づけられた世界を分析するのに対して、メルロ=ポンティはこの癌状の分析から人間に備わる知覚機能の本来的な特徴を提示しようとする。ここから結論として、メルロ=ポンティの現象学における失語症分析の重要性を指摘した。メルロ=ポンティの失語症分析を個別に扱った研究は本論文が初めてである。次に、メルロ=ポンティの政治論に関する論文を執筆した。政治と病理は一見すると隔たったテーマである。しかしメルロ=ポンティは政治的な事象を病理的な側面から論じているのも事実である。実際に、『ヒューマニズムとテロル』(1947年)、「マキアヴェッリ覚え書」(1949年)、『弁証法の冒険』(1955年)において、メルロ=ポンティは、どのような条件で為政者および政治的共同体は堕落するのかを仔細に分析している。彼によると、政治的な共同体において高次の階級に属する人間(君主、党指導者)が下部の階級に位置する人間(人民、プロレタリア)の「反響」を意識することをやめる場合に、その共同体は瓦解する。メルロ=ポンティの政治論に関しては、これまでマルクス主義的な観点からの研究が大半を占めていた。これに対して、本研究はメルロ=ポンティの政治論を病理的な視点から考察した。これは研究史において初めての試みである。最後に、フッサールの空想論に関する論文(「時間意識における空想の役割」)を執筆した。知覚活動の最も大きな特徴は時間的な枠組みである。これに対して、空想は時間的な枠組みを逸脱した行為である。ところがフッサールは『ベルナウ時間草稿』において、空想と時間の関係を提示している。空想はどの点において、時間と関連するのかをテーマとして立て、結論では空想は形式面では時間に関係するが、行為の内容面では時間と関連しないことを提示した。知覚の病理的な側面という今年度の研究テーマの一環として、空想という知覚を逸脱した行為を分析した点が、本論文の意義である。またフッサールの時間論と空想論の関係に関する研究は先行研究に乏しく、本研究はこのテーマをほぼ初めて扱った。知覚の病理的な側面が、今年度の研究テーマであった。このテーマを知覚の病理的現象、政治、空想という多様な視点から分析したことが今年度の重要な成果である。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)