Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2009: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2008: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Research Abstract |
女子が理科の中でも特に苦手としている物理の授業に関して,女子の興味,自己概念,学習到達度の向上を目指したドイツの大規模な実践的研究を調査し,女子の経験を授業に導入することと,人体と物理概念との関連性を強調することがその物理教授の特徴であることを見出した。また,他国においても女子の物理学習促進のためには,女子の興味や思考の特性に基づき,「現実性」「女子に身近な事象」「養育的視点」「生物学的視点」を物理教授に取り入れることが度々推奨されていることが明らかとなった。このことに加え,文脈に基づく教授方法(コンテクストベースドアプローチ)やキャリア教育の導入が,女子の理科学習への動機づけや学習到達度の向上に有効であるという先行研究も合わせ,日本の中学校理科の授業で実践する方法を検討した。そして,「看護的文脈による人体アプローチ」という人体との関連性を強調する物理の教授方略を考案し,理科第1分野の物理学関連領域である「仕事の原理」の授業において試行し,教授方略を評価した。女子に身近である看護師という職業を題材として,看護師が患者の体を移動させる際に,自身の体への負担を小さくし,楽に作業できるようにするためのコツを授業における体験的活動として導入した。この授業の結果,女子だけでなく男子も積極的に授業に参加し,特に女子の理科に対する有用性の認識が高まった。また,女子は普段の理科授業における理解度に自信が持てておらず,授業の内容を理解できるかどうかという点を重要視していることと,友人との協同的な問題解決活動を好むことも明らかとなり,人体アプローチは女子の物理学習促進に概ね効果的であったと結論づけられた。今後は,女子の理科学習促進を期待できるさらなる教授方略の開発とともに,教師教育や科学教育政策の視点からも女子の学習支援について研究を進めていく予定である。
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