核磁気共鳴法を用いた層状超伝導体の超伝導対称性の同定およびその発現機構の解明
Project/Area Number |
08J00851
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biophysics/Chemical physics
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 祐介 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2008 – 2010
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 鉄砒素系高温超伝導 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き鉄系高温超伝導体の発現機構を明らかにするべく核磁気共鳴法(NMR)を用いて研究を行った。LaFeAs(01-xFx)において、常伝導状態の磁気励起がFドープに対してどのように変化するのか、また磁気励起と超伝導の関係についてAs核の1/T1の測定を通して調べた。母物質LaFeAsOは140Kあたりで1/T1Tが発散することから、反強磁性状態に転移したことがわかった。Fをドープすることによりこの磁気秩序および磁気励起は急激に抑えられ、最大の超伝導転移温度Tcを持っ11%の試料では室温以上の温度から連続的に減少する振る舞いが見られ、反強磁性ゆらぎの発達は見られない。1/T1Tの結果はFドーピングに伴い低エネルギー磁気励起は急激に抑制されるのに対し超伝導転移温度の変化は僅かであることが示され、NMRで観測される低エネルギー磁気励起と超伝導との相関は弱いと考えられる。 また本年度に発見された新しい鉄系超伝導体BaFe2(As1-xPx)2(最大Tc=30K)に対して、常伝導状態と超伝導状態の性質を明らかにするべくP核のNMRを行った。その結果、上記のLaFeAs(01-xFx)と対照的に、常伝導状態に非常に顕著な反強磁性ゆらぎが観測され、磁気励起と超伝導が関係することを示唆する結果を得た。また超伝導状態には、通常のs波超伝導体に予想されるコヒーレンスピークが現れないこと、超伝導状態に残留状態密度があることを示し、この物質が非従来型超伝導であることを明らかにした。他の測定結果(磁場侵入長や熱伝導率測定)と考え合わせると、BaFe2(As1-xPx)2は超伝導ギャップにラインノードをもつ可能性が高い。高いTcをもちながらもラインノードをもつ鉄系超伝導体はこの系が初めてであり、それを明らかにした本研究の意義は大きい。上記のように鉄砒素系超伝導を理解する上で重要となる基礎的な実験を行い、現在数多く参照される結果を報告した。
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Report
(2 results)
Research Products
(22 results)