Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2010: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2009: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2008: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,近年の経済学における公正研究の背後にある進化・適応的観点を導入し,これまで公正性の追求という同一原理として捉えられてきた公正行動に,複数の適応基盤が存在することを示し,公正行動の領域特定性という新たな視点を社会心理学の公正研究に導入することにある。いくつかの研究を通して,公正行動には,交換場面での悪評を避ける"一般交換システムへの受容",行動の一貫性を保つことで他者からの搾取を防ぐ"コミットメント問題解決"の少なくとも2種類の異なる適応基盤が存在する可能性を指摘することを試みる。 平成22年度では,公正行動の中でも特に非協力者に対する罰行動に注目し,非協力者に対する罰行動の全てが同一の適応基盤(他者からの搾取を防ぐ)を有するのか,あるいは別の適応基盤(規範に従った社会的に望ましい行動としての評判を獲得することで他者から報奨される)を有するのか検討することを目的とした研究を実施した。研究の結果,二者関係において生じる罰行動は非協力者への制裁行動というかたちであるにも関わらず,他者から好ましい評価を受けづらい傾向にあることが確認された。一方,複数の人間関係において生じる罰は,社会規範に従った行動として認識される余地があることが示唆された。また,公正行動の進化を検討する研究として,コンピュータ・シミュレーション研究に着手した。非協力者への罰行動の利益が将来における他者からの搾取を防ぐ点にあると想定し,この利益を獲得することによって非協力者への罰戦略が進化し得るかどうかを検討した。分析の結果,罰行動が感情(不公正に対する直接の反応)に基づいて生じるという前提であれば,自己利益の放棄行動である公正行動も,自己利益を追求する合理的戦略よりも相互作用の中で高い利益を獲得することに成功し,進化し得ることを確認した。
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