Research Abstract |
遷移金属触媒を用いる炭素-炭素多重結合へのヘテロ原子-水素結合の付加反応は,単純かつ原子効率の高い炭素-ヘテロ原子結合の形成法の一つである.さらに,その不斉反応は様々な光学活性化合物を合成する魅力的な手段であり,炭素-炭素二重結合を有する様々な化合物がこれらの反応に用いられてきた.その反応基質としてアレン類は十分に高い反応性を有しているが,分子間での不斉付加反応に用いられた報告例は少ない.そこで,効率的かつ高エナンチオ選択的な新規炭素-ヘテロ原子結合形成反応の開発を目的として,遷移金属触媒を用いるアレン類へのヘテロ原子求核剤の不斉付加反応について研究を行った.最近,林らはRh/(R)-binap触媒を用いるジフェニルホスフイニルアレンの不斉ヒドロアルキニル化反応を報告しており,立体選択的なπ-アリルロジウム中間体の形成,位置選択的なプロトン化がエナンチオ選択性を発現する鍵であることを明らかにしている.この知見を基に,ヘテロ原子求核剤のジフェニルホスフイニルアレンへの不斉付加反応について検討した.その結果,Rh/(R)-DTBM-segphos触媒存在下,フェノール類によるジフェニルホスフイニルアレンの不斉ヒドロアルコキシ化が進行し,光学活性なビニルエーテル誘導体を高収率かつ高エナンチオ選択的に与えることを見いだした.また,触媒反応における1H,および31P NMRの観測から,双性イオン性π-フェノキソロジウム種とπ-アリルロジウム種の2種類の鍵中間体を観測することに成功した.さらに同触媒存在下,チオフェノール類によるジフェニルホスフイニルアレンの不斉ヒドロスルフェニル化反応も進行し,光学活性なビニルチオエーテル誘導体が良好な収率と良好なエナンチオ選択性で得られることも明らかにした.
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