Research Abstract |
本研究では,送信用HTS(高温超伝導体,High-Temperature Superconductor)フィルタ実現のためにリアクションフィルタに注目し,これまでに蓄積された技術から発展した新たな動作方式および構造を持つHTSフィルタを提案し,数値解析や試作実験により詳細検討を行い,その実現可能性を探った.さらにひずみ解析・測定評価技術等の周辺要素技術開発を推し進め,新デバイス実現のための研究を行った.まず,リアクションフィルタを構成する新たな構造を有する分割オープンリング共振器の構造最適化を実施した.最適化した共振器は,高無負荷Q値化(約100,000)および電流密度分散効果による耐電力特性向上の同時達成が可能となった.これらの検討結果を踏まえ,第4世代移動体通信システム基地局送信用HTSリアクションフィルタの設計・製作を行った.ここでは,5GHz帯リアクションフィルタの測定評価を行い,40dB/MHz以上の急峻遮断特性および低相互変調ひずみ特性を実験確認した.本フィルタは,マイクロ波電力増幅器から発生する隣接帯域ひずみ抑圧を目的としており,通過損失0.1dB以下,帯域幅4MHzおよび抑圧量10dB以上の超低挿入損失特性かつ急峻遮断特性を有している.また,詳細な相互変調ひずみ等の非線形ひずみ特性を明らかにするための,高度な非線形特性評価法について検討を実施した.100dB以上の高ダイナミックレンジかつ高精度のひずみ振幅・位相測定系を構築し,HTSデバイスの非線形ひずみ特性を詳細に取得した.取得した非線形特性を的確かつ矛盾なく説明可能な,複素べき級数に基づく非線形特性解析を行い,HTSマイクロ波デバイスの詳細な非線形特性を初めて明らかにした.
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