低エネルギー超高分解能光電子分光によるコバルト酸化物超伝導体の電子構造の研究
Project/Area Number |
08J04412
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biophysics/Chemical physics
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒金 俊行 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2008 – 2010
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2010)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 光電子分光 / コバルト酸化物 |
Research Abstract |
比較的大きなブリルアンゾーンサイズを有するNa_xCoO_2において、単一試料劈開表面で全ブリルアンゾーンにおける電子状態を決定する事を目的として、前年度に引き続きARPES用低温試料多軸回転装置の開発を行った。前年度製作した回転機構を新たに製作した試料冷凍機に組み込み、性能評価を行った。各回転軸における角度精度はARPES測定に十分な0.1゜以下であり、液体^4Heによる冷却時の試料上の温度は~25Kである事を確認した。これを用いて高ドープ領域の高い熱電能や比熱等に現れる物性異常や磁気転移の起源を明らかにする目的で、高分解能ARPES測定を行いNa_xCoO_2の電子状態のドープ量依存性を3次元的に決定した。低ドープ領域では2次元円筒型のトポロジーを示すフェルミ面は、ドープ量の増大に伴って強いk_z依存性を示すようになり、x=0.75を超える高ドープ試料においてはΓ点を中心とした3次元的に閉じたフェルミ面が出現し、さらにx=0.85程度までドープ量を増大させると、これらのフェルミ面が結合し、A点中心の閉じた一つの3次元的なフェルミ面を形成する事を見出した。このようなフェルミ面の変化は、ゾーン中心に極小構造を有するα_<1g>ホールバンドのリジッドシフトにより説明できると結論した。この結果から、新たなフェルミ面の出現が電子比熱係数の増大に、α_<1g>バンドの特殊な形状が高ドープ領域における熱電能の上昇に、フェルミ面のトポロジーの変化が磁気転移の出現に各々対応すると考察した。さらに、水和試料における超伝導機構の解明を目的として、Na_<0.35>CoO_2・1.4H_2Oの高分解能ARPESを行い、非水和Na_<0.35>CoO_2との電子構造の比較を行った。非水和試料と同様に、Γ(A)点中心のα_<1g>ホール面のみが存在しており、K(H)点近傍の小さなe_g'ホール面は欠如している事を見出した。この結果は、Na_<0.35>CoO_2・1.4H_20超伝導が、α_<1g>ホール面のみで起こる単一バンド超伝導である事を示唆しており、理論モデルと他の実験の比較から、超伝導対称性はs波もしくはd波である可能性が高いと結論した。
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Report
(3 results)
Research Products
(21 results)