Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本年度は二つの事柄について研究した.一つは一階有理的差分方程式の超越関数解の非初等性に関するものである.一階線形差分方程式や余弦関数の倍角公式,正接関数の倍角公式などは一階有理的差分方程式である.また,超越関数とは代数関数でない関数のことで,初等的な関数とは,ここでは一階線形差分方程式の解によって代数的に表示できる関数のことである.得られた結果は,方程式の有理式部分の次数が2以上であれば超越関数解は非初等的であるというもので,系として,指数関数や三角関数,ワイエルシュトラスのペー関数の,倍角公式を持つ関数としての非初等性が得られる. もう一つの研究ではボアンカレの乗法公式が定義する関数を扱った.ボアンカレの論文では,それらの関数は一価関数の新しいクラスを構成すると,「新しい」の意味が明確にされずに主張されている.私はある種の乗法公式の既約性を示すことでこの主張が正しいことを証明した.ここでは分解可能拡大に属す超越関数解が存在する場合に方程式は可約であるといい,そうでない場合,既約であるという. 関数の初等性と方程式の既約性には関係があり,実際初等的な関数は必ず分解可能拡大に属す.一方,第一研究で挙げた指数関数,三角関数,ペー関数は何れも初等的ではないが,それぞれがみたす倍角公式が一階有理的差分方程式であることから,分解可能拡大に属すことがわかる.さらに,第二研究で扱ったボアンカレの「新しい」関数について,乗法公式が特に倍角公式であるとき,「新しい」関数は初等的な関数や指数関数,三角関数,ペー関数などの分解可能拡大に属す関数によっては有理的にも代数的にも表されない.
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