Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
魚群行動の時空間的な最小スケールは,2個体間の一瞬の行動伝播であり,これが時空間的に連続することによって,ある特徴を持った魚群行動が創発すると考えられる。すなわち,魚群の特徴が誘発されるメカニズムを明らかにするためには,近接個体の動きを刺激として知覚する感覚器の機能や,その刺激に対する反応行動として起こる個体間の行動伝播,それが時空間的に連続した群れの特徴のそれぞれの関連性を適切に評価することが重要となる。そこで今年度の研究では,組織生理学的手法による視覚の機能解析,観察実験に基づく魚群行動解析,さらにシステム工学的手法を用いた個体の行動決定要因の定量評価のそれぞれを統合したアプローチを,クロマグロの個体発生の順を追って解析していくことで,本種の魚群行動の特徴が誘発されるメカニズムを解明することを試みた。その結果,本種の群形成は,個体をとりまく流体力学的な環境が粘性力の支配的な環境から慣性力が支配的となる環境へと遷移する時期に,この環境変化への適応として巡航遊泳を開始する際に発現すると考えられた。この時期から,個体の行動決定要因では,ある固有の速度で遊泳し続ようとする傾向と,近接魚と速度ベクトルを揃えようとする力の支配性が向上し,個体間の行動伝播も観察されるようになった。しかし,群形成発現直後の個体間行動伝播には,長い時間が必要となっており,平行遊泳性も低い。その後の成長に伴い個体問の行動伝播に要する時間が短くなることで群の高い平行遊泳性は実現された。すなわち,本種の群形成の発現には,巡航遊泳の開始が大きく関わっており,その後,平行遊泳性の高い群形成をするためには,他個体の動きに対する反応行動を短時間で制御し達成するための脳神経系などの発達的変化と,持続的な巡航遊泳や短時間での旋回を可能にする遊泳能力の向上が必要となると考えられた。
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