Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,マツ科針葉樹アカエゾマツの孤立個体群の遺伝的多様性維持メカニズムを解明し,保全のための定量的な指針を提案することである.最終年度である本年度は,これまで得られたデータの解析と研究の総括を行った. 前年度に引き続いて統計モデルによる解析を行った結果,受粉~種子段階の自殖率はそれぞれ0.772・0.443,近交弱勢の強さ(他殖種子に対する自殖種子の生存率低下)は0.721と推定された.稚樹個体群に対しても同様の解析を行い,受粉~稚樹段階までの近交弱勢の強さは0.730,受粉・稚樹段階における自殖率はそれぞれ0,386・0.176推定された.また,遺伝的な浮動の強さに影響するパラメータである有効集団サイズ(N_<ep>)を個体ごとの繁殖成功度から計算した結果,33.12(次世代の個体数が無限と仮定した場合)であった.次世代に更新する稚樹個体の数を変えてシミュレーションを行った結果,N_<ep>は約130個体(現在の分布面積の約30%に相当)を下回ったときに減少した.したがって,短期的な遺伝的多様性の喪失が起きないためには,少なくとも上記の個体数・面積を維持することが必要であるといえる. さらに,稚樹個体群において推定したパラメータを用いて,環境変動に対する次世代の適応ポテンシャルを維持できる個体数をシミュレーションによって検討した.結果,個体数が10個体を下回ったとき,次世代における量的形質の多様性が減少した.さらに,極端なものを含むいくつかの環境変動シナリオのもとで集団の適応度を推定した結果,個体数が10-20個体を下回ったとき,確率的な浮動によって集団の適応度が急激に低下する可能性が高くなることが示唆された.したがって,環境変動下で次世代の適応ポテンシャルを維持するためには,少なくとも10個体あれば十分であろうということがいえる.
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