Research Abstract |
自他の類似性が顕著な模倣を自閉症児に提示し続けた場合、他者への関心は増大していくのだろうか。自閉症幼児に対して介入を一定期間持続して行った際の他者への関心・社会的認知の発達的変化について検討した。 ある療育施設に通う自閉症児16名(MA=29ヶ月)とその母親に協力を得た。各群は模倣条件と随伴条件に割り当てられ、2ヶ月間、母親は毎日5分間、子どもの模倣行動か随伴行動を行うように教示された。2ヶ月の縦断的介入前後に、母親への関心(自由遊び→Still Face 1(SF1)→介入(模倣/随伴)→SF2→自由遊びというSFパラダイムでのSF1,介入,SF2における対象児の母親への注視量)、模倣課題(Meltzoff,1988)、意図理解課題(Meltzoff,1995)を測定した。 幼児の母親への注視時間を分析した結果、両条件において模倣/随伴行動をしている時間の方がSF時よりも長く母親を注視した。また、模倣条件においては介入前より介入後の方が長く母親を注視し、介人後における母親への注視時間を測定すると随伴条件より模倣条件の方が長かった。模倣課題においても介入前後で変化がみられた。模倣条件においては介入前より介入後の方が他者の行動を多く模倣し、介入後における模倣は随伴条件より模倣条件の方が多かった。しかし、意図理解課題に関しては条件間及び介入前後で有意な変化は観察されなかった。 この結果から、自閉症児の模倣を継続することによって、全般的に母親への注視量が増えることが示唆された。また、模倣提示を続けた際の対象児自身の模倣行動の増加から、社会的認知発達を促す可能性が示された。一方、他者意図理解に介入効果はみられなかったが、介入期間の長さの問題か、模倣提示が持ちうる効果の限界かはまだ明らかではなく、今後検討していく必要がある。
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