環境変動と交雑によるアイナメ属3種の遺伝的集団構造の変動メカニズムの解明
Project/Area Number |
08J06885
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Ecology/Environment
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 幹子 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2008 – 2009
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 交雑帯 / 海産魚類 / 半クローン生殖 / ゲノム排除 / 生殖的隔離機構 / 生殖様式 / 気候変動 / 沿岸生態系 / 雑種生殖 / 遺伝的集団構造 |
Research Abstract |
本研究では、亜寒帯性種のスジアイナメ、温帯性種のクジメ・アイナメの3種を含む交雑帯について、気候変動や遺伝子浸透による交雑帯の集団構造の変動メカニズムを解明することを目的として研究を行った。温暖化などの気候変動にさらされたとき、水温耐性の違いなどによって維持されていた3種の分布境界の変化が生じること、さらに他種からの遺伝子浸透により温度耐性などの適応形質を獲得することが、交雑帯の集団構造を変化させる可能性があると予測した。しかし、亜寒帯性種と温帯性種間の遺伝子浸透は生じておらず、3種間で生じた雑種が「雑種生殖」と呼ばれる半クローン生殖を行っていることが遺伝子浸透を妨げる原因であることが明らかになった。雑種生殖とは、雑種が卵形成の過程で父方の染色体を排除し、母方の染色体のみ組み換えなしで卵に伝える特殊な生殖様式であり、世界で4例目(海産魚類では初めて)の発見である。 本年度は、一昨年前に作出したF_1雑種系統を用いて、雑種生殖の遺伝様式の確認を行った。マイクロサテライトマーカーでの検証と染色体観察およびDNAフローサイトメトリーによる倍数性の確認を行った結果、F_1雑種系統では雑種生殖は行われておらず染色体数も安定しなかったが、野外で採集された雑種では雑種生殖が確認された。このことから、現在は交雑帯内で3種間の交雑は行われておらず、野外で採集される雑種は、過去に交雑して雑種生殖の生殖様式を獲得してきた系統が、代々半クローンとして繁殖しながら生きながらえている可能性が強く示唆された。今後、野外雑種と人為的に作出したF_1雑種との遺伝的な構造の違いを比べることにより、異質なゲノムを排除する至近的なメカニズムを明らかにすることが出来るかも知れない。これは、生殖隔離機構を一瞬で成立させ、急速な種分化をもたらす、重要なメカニズムの一つを解明する事につながると期待される。
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Report
(2 results)
Research Products
(15 results)