Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
平成22年度に実施した研究は主に以下の二つである. 第一に,「マクスウェルのデーモン」の代表的なモデルである「Szilardエンジン」の実験的な実現に成功した.Szilardエンジンは、フィードバック制御によって情報を仕事・自由エネルギーに変換することができるが、従来は理論的に考えられていただけであった.本年度の研究において,中央大学・宗行研究室と東京大学・佐野研究室との共同研究により,サブミクロンスケールのコロイド粒子に対するフィードバック制御を行うことで,第二法則が課す限界よりも多くの自由エネルギーを系に獲得させる実験に,世界で初めて成功した.この実験は古典フィードバックを用いたものであるが,量子フィードバックの観点からも、その熱力学的性質の実験的検証につながる重要な実験である.また,この実験により,フィードバックがある状況下では通常のJarzynski等式は成り立たず,そのかわりに21年度の研究で私が理論的に導いた一般化Jarzynski等式が成立することが検証された.この結果はNature Physicsから出版された. 第二に,Szilardエンジンの量子系への拡張を行った.その結果として,多粒子量子Szilardエンジンから取り出せる熱力学的仕事量の一般的な公式を導出することに成功した.そこから,まず,単一粒子のSzilardエンジンにおける量子効果が明らかになった.さらに,多粒子の場合について,低温で同種粒子性の効果が表れることが明らかになった.たとえば二粒子の場合について考えると,絶対零度近傍では,ボゾンの場合の方がフェルミオンの場合よりも多くの仕事を取り出せる.高温極限では,ボゾンの場合もフェルミオンの場合も,ともに区別可能な古典粒子の場合の結果に一致することも示された.この結果はPhysical Review Lettersから出版された.
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