Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2009: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2008: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Research Abstract |
本研究課題に関する平成21年度の成果は,以下の2点に要約される. 第一に,滋賀大学付属史料館所蔵「近江国蒲生郡鏡村玉尾家文書」の分析が,計画通り進捗したことである.1.現在の近江八幡市の西南に在した農家である玉尾家は,敦賀より魚肥を仕入れる肥料仲間に加盟し,仕入れた肥料を近隣の村々へ販売することを生業としていたこと,2.肥料販売の代価としては,米を受け取ることが多かったこと,3.全ての取引が,大津市場における時価に基づいて行われていたこと,の3点が実証された.玉尾家による肥料販売活動,並びに米穀購買活動が,正確に,大津市場における時価を反映していたという事実は,当該期における市場経済の伸展度を示すものとして特筆に値する.以上の研究成果は,社会経済史学会において報告され,そこでの知見を踏まえた論稿を「取引統治効果の深化と派生-近世期地方米市場の拡大-」として,現在,学会誌『社会経済史学』に投稿中である. 第二に,近世日本における司法制度と米市場との関わりを明らかにした点である.当時にあって最も重要な財市場・金融市場であった大坂米市場においては,米取引を巡る紛糾に関して,江戸幕府が訴権を否定することはなく,一貫して,取引当事者の財産権を保障し続けていたことが明らかとなった.大坂米市場においては,もはや近代と比肩し得るだけの制度的基礎を備えていたのである.市場制度の,近世から近代への移行過程を捉えるという,本研究課題の第二の主題はここに達成されたと考えている.以上の成果をまとめた論稿は,『歴史と経済』,『史学雑誌』に掲載された. 以上の成果は,東京大学大学院経済学研究科に提出した学位請求論文「近世大坂米市場分析-効率的市場の形成と展開-」として結実し,2010年3月24日,同研究科より博士号(経済学)を授与された.
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