Research Abstract |
低分子量GTPaseであるRAB5は,活性型時に,エフェクターとよばれる分子群と相互作用することにより,細胞内輸送において多様な現象を制御すると考えられている.RAB5は真核生物に広く保存されているが,陸上植物には保存型RAB5に加え,ユニークな一次構造を有するRAB5ホモログをもつ.モデル植物であるシロイヌナズナには,保存型RAB5であるARA7・RHA1と,植物固有型RAB5であるARA6が存在し,この2種類のRAB5が異なる輸送経路を制御することにより,花成や細胞分化,根の形態形成などの現象を制御することを明らかにしてきた.このようなRAB5の機能は,さまざまなエフェクターとの相互作用を介して発現していると考えられるが,植物にはこれまで報告されている動物RAB5エフェクターのホモログは見いだされず,その仕組みは全く明らかになっていない.そこで,申請者は,植物固有型RAB5であるARA6がどのような機能を持つかを明らかにすることを目的とし,ARA6のエフェクターの同定と機能解析を試みた.本研究では,独自のRAB5を持つ陸上植物を対象とすることにより,真核生物におけるエンドソームを介した情報伝達経路の普遍性と多様性について総括的な知見が得られると考えている. 昨年度までに,7つのエフェクター候補を得,Plant-unique RAB5 Effector(PUF1~7)と名付けた.本年度は,PUF3とPUF2が活性型ARA6と特異的に相互作用し,植物個体中でARA6エンドソームに局在することを明らかにした.また,PUF3について,不活性型固定変具型ARA6を発現する個体中で,核での局在のシグナルが上昇する現象を見いだし,PUF3が,ARA6エンドソームをシャトルするシグナル分子として機能する可能性を示した.さらに,PUF2について,RAB5活性化因子やPUF3と相互作用することや,保存型RAB5と同じ遺伝学的相互作用を示すこと,保存型RAB5とARA6の両方が局在するエンドソームに特異的に局在することを明らかにし,PUF2が,植物の2種類のRAB5をエンドソーム上で統御する因子である可能性を示した.
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