Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
今年度の目標は,絶滅した二枚貝様の底生無脊椎動物腕足類スピリファー類における流体力学的特性を,受動的な採餌水流の形成メカニズムの点から明らかにし,鍵となる殻の形質の最適性を検討することであった.初年度の研究によって,スピリファー類が受動的採餌水流を効果的に発生させるには,殻の正中線上にある湾曲部サルカスが重要な役割を果たしていることがわかっている.したがって,このサルカスの発達具合が微妙に異なれば,流入の強さも異なる可能性が考えられる.そこで,サルカスがどのような制約条件のもと最適化されていたのか検討するために,サルカスの発達具合を変化させたモデルを用いて流体解析を行った.サルカスを完全に欠如させたモデルで解析を行った結果,流入流出関係が逆転するだけでなく,殻内側で生じるはずの渦流が効果的に形成されることはなかった.また.サルカスの深さを3段階に変化させたモデルを用いて解析を行った結果,開口部における圧力差は,サルカスが深いほど大きくなることが明らかとなった.一方,殻内側の理想的流体挙動である渦状旋回流は,3段階のサルカス全てのモデルで形成されることがわかった.しかしながら深いサルカスおよび浅いサルカスとしたモデルにおける渦状旋回流の流速は,周辺流速の違いに応じて不安定であった.これら一連の結果は,より深いサルカスであれば,高い圧力差を発生しやすい上,力強い流入を可能にすることを意味する.その一方で力強い流入は,殻内側で受動的な採餌を行う上で不都合であった可能性が高い.さらに深いサルカスは,自然環境下で見られるような周辺水流の速度変化に対して過敏に機能するため,受動的採餌を行う上では不利であったと考えられる.結果的に,スピリファー類のサルカス形態は,受動的採餌を行うために,流水環境に対する機能と軟体部の最適濾過条件の関係によって制約を受けている可能性が示唆される.
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