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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
本研究では、有用な立体保護基である2,4,6‐トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(以下Tbt基)を活用することで,これまで安定な合成例はおろかスペクトル的な観測さえ報告されていなかったジスチチベン(RSb=SbR)やジビスムテン(RBi=BiR)を安定に合成・単離し、その未知の結合様式の構造、物性を解明するとともに、一連の15族元素間二重結合化学種の構造・性質に関する系統的な比較研究を行うこととした。 まずSbおよびBi原子上へのTbt基の導入を検討したところ、対応するハロゲン化物に対しTHF中低温でTbtLiを作用させることでTbt置換のジハロスチビン1およびジハロビスムチン2を良好な収率で得た。次にTbt基で置換された1,3,5-トリセレナー2,4,6-トリスチバン誘導体4をリン試剤で脱セレン化するという新規な合成法を開発し、目的のジスチベン5を安定な緑色結晶として単離することに成功した。5の前駆体となる4はジハロスチビン1とLi_2Seとの反応で容易に合成できた。またBiの系でも、対応する1,3,5-トリセレナー2,4,6-トリビスマン誘導体6を合成した後、トルエン封管中100℃でヘキサメチル亜リン酸トリアミドと反応させることにより、目的のジビスムテン7を安定な紫色結晶として合成・単離することができた。未だ合成例の全くない第六周期元素を含む二重結合化合物であるジビスムテンの合成は、高周期元素化学における相対論効果の実験的検証という観点からも非常に重要な研究である。 本合成研究においては、反応終了後反応溶液を徐々に室温まで冷却することでジスチベン5およびジビスムテン7が単結晶として析出した。これらの単結晶についてX線結晶構造解析を行い、これまで未知であった第五および第六周期の15族元素間の二重結合についての構造パラメーターを得ることに成功した。5および7はその分子の高い対称性を反映し有機溶媒に対し非常に低い溶解度を示したが、ヘキサン中での紫外・可視吸収スペクトルの測定は可能であった。またレーザーラマン分光法を用いた固体試料のラマンスペクトル測定にも成功した。
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