Research Abstract |
本研究は,電気化学的に金属チタン等金属インプラント表面に生体活性な酸化物ゲル層を生成させることを目的としている。この層は,生体内環境下で自発的に骨類似のアパタイトを沈着し,それによって組織と強固に結合する。本年は,次の各項に関し検討した。 1. 電解質溶液の効果 NaやK等アルカリ金属の塩化物または硝酸塩を電解質とした場合は,金属表面のゲル膜は生体活性を示さなかった。これは,これらの陰イオンが,インプラント金属電極表面または白金対極表面で何らかの電気化学的変化を受けていることが原因と考えられた。そこで,より過電圧の高い硫酸イオンに変えて,硫酸ナトリウムを用いた。作用極はチタン板,参照電極は銀/塩化銀電極とし,3MKCl(100ml,)/アガロース(3g)の塩橋を用いて,電流-電位(C-V)曲線を描かせた。陽極側でピークが見られた0.9Vおよびl.8Vで保持した後,擬似体液に14日間浸漬したが,アパタイトの析出はなかった。 2. カルシウムイオンを含む電解質溶液中での電界酸化 アパタイトの析出は材料からのカルシウムイオンの放出が一つの引き金になる。そこで,0.1M硝酸カルシウム溶液中で電界酸化し,生体活性を調べた。ここでは(1)9.5Vで1時間陽極酸化させた後,-3V10分間陰極分極させたもの,および(2)-3Vで1時間陰極分極させたもの,について,擬似体液中でそれぞれ浸漬後1日以内でアパタイトが析出した。さらに,電界酸化電流値は,大きいほどCa(OH)_2が析出し易く,小さいとCaCO_3が析出したが,いずれもアパタイト析出には効果があることがわかった。
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