Research Abstract |
モンテカルロ法を利用した有限要素法による応力解析と構造信頼性工学を応用することで,コンポジットレジン修復歯の信頼性(コポジット充填時のエナメル質亀裂の発生率)の評価を試みた.モデル外形は上顎中切歯を唇舌方向に二分割した断面をトレースにより作成し,窩洞形態はバットジョイント単純窩洞とした.レジン,エナメル質および象牙質の各弾性率ならびにレジンのゲル化後の重合収縮値に対し,モンテカルロ法を用いて不確かさを考慮にいれた.すなわち,今までに報告されている各物性の平均値と標準偏差をもとに乱数を用いて,各物性値を50個分サンプリングした.次に,サンプリングされた物性値を用いて有限要素法による応力解析を50回繰り返すことで,窩洞窩縁部エナメル質内の最大引張主応力の平均値と標準偏差を求めた.さらに求められた最大引張主応力の確率分布に対して,正規分布の適合性をカイ二乗検定により確認後,構造信頼工学における静的破壊を考えた応力-強さモデルを適用した式により窩洞窩縁部エナメル質の破損率を算出した.その結果、下記の結論が示された 解析に用いたモデルにおいて,レジンの重合収縮に起因して窩洞窩縁部エナメル質内に発生した最大主応力は用いたレジンによって異なり,平均値で9.7MPaから77.5MPaの範囲であった.いずれのレジンの場合にもエナメル質内に発生した応力の確率分布としては正規分布を適用できることが統計的に示された.レジンの重合収縮に伴う応力に起因する窩洞窩縁部エナメル質亀裂の発生確率は用いるレジンにより異なり,0から98.9%の範囲であった.窩洞窩縁部エナメル質亀裂発生確率とレジン重合収縮値およびレジン弾性率との関係をみると,エナメル質亀裂発生確率とレジン重合収縮値との間に高い相関がみられたが,レジンの弾性率との間には相関はみられなかった.
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