Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、古代日本人の心性について探究することを目的とし、古代日本人の異郷観念についての研究と、芸能・歌謡研究という、二つの課題を設けている。古代日本人の異郷観念についての研究は、当初の課題であったムスヒ神の問題に立ち返り、神々の世界に向かう古代の人々の想像力の原点に位置するこの神について、そもそもムスヒ(もしくはムスビ)とはどのような神霊であるかという根本的な問いを立てて研究し、その成果を二度の口頭発表として公表した。発表内容は、主に『出雲国風土記』の「神魂命」という神名に着目し、本風土記における他の神名表記のありかたに照らして考察した結果、従来説が示してきた「ムス+ヒ」もしくは「ムス+ビ」という訓読・神名理解よりも、「ムスビ」一語で「結」の意を持つ(魂を結びつける神)と解釈するほうが妥当性が高いという判断を示した。この発表内容は従来の諸研究の流れと大きく異なるものであり、「魂」字の訓を見定める方法について資料の制約からなお十全かつ盤石な論とするには問題なしとしないが、従来説の不備の指摘と、「ムスビ」という神霊が八世紀代の文献にまで遡って認められ得るという主張とは、今後のムスヒ神・ムスビ神研究に新たな角度をもたらすことができたのではないかと考える。芸能・歌謡研究については、従来続けてきた催馬楽の基礎的研究をまとめ、公表する最終的な準備を整えた。催馬楽研究は、たとえば「万葉集」研究と比べると研究の層が薄く、各注釈書がどのような催馬楽テキストに基づいて注釈を施しているのかという基本的な研究が管見の限りほとんどなされてこなかったが、拙論「催馬楽注釈史誌」はこれまでの主な注釈書が引用している歌詞の異同に注意し、江戸期から現在までの催馬楽研究が負っている資料的な特徴を指摘して、現代の研究の質を問い直したものである。
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藝文研究 97
Pages: 1-24
40016973030
三色旗 740
Pages: 27-32
http://www.nhk.or.jp/manyoushuu/