Project/Area Number |
09J00854
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Philosophy/Ethics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮野 真生子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 偶然性 / 倫理 / 日常 / 行為 |
Research Abstract |
本年度、私は、日常を生きるうえで、いかにして「偶然」とかかわるかという観点から、九鬼周造の倫理的可能性を問う作業をおこなった。その作業は具体的には、二つの方向からおこなわれた。(1)和辻哲郎が提示する「間柄」に基づく必然性重視の倫理観との比較。(2)田辺元が晩年の『マラルメ覚書』で提示した「行為の偶然性」というアイデアを媒介として、九鬼の偶然性概念を発展させること。 (1)和辻の『倫理学』において、分析の基礎となるのは、「日常の事実」である。間柄を分析し、倫理を析出する和辻は、徹底して「日常の事実」に立つ。だが、日常がつねに私たちとともにあるからと言って、それを即座に「自明の前提」として無批判に受け入れることができるのだろうか。その前に私たちはまず、なぜ日常を当たり前の事実、自明の前提として受け入れてしまうのかを問い、この自明性を成立させる「日常性」のメカニズムについて考えることが必要ではないのか。「日常の事実」に立つ思索は、そのときはじめて広い射程を有することができる。以上のような問題意識を出発点として、和辻と九鬼の「日常」観の相違を分析した。 (2)九鬼哲学では、「偶然性」は「存在」の問題として扱われてきたが、これに対し、田辺元は『マラルメ覚書』において「行為における偶然性」について論じている。九鬼周造の哲学を「倫理」として展開するためには、「行為」の次元を考えることが不可欠であり、その部分を補うのが、田辺の『マラルメ覚書』である。彼はここで、行為の当否は常に偶然に委ねられており、その偶然を生きることこそが「倫理」であると論じている。つまり、一般に「倫理」とは「必然」を説くものと考えられがちだが、それにたいし、田辺は「偶然」にこそ「倫理」を見た。それは、必然によって自己と他者、あるいは未来を縛る固定的な倫理ではなく、より自由な倫理的関係を可能にするものであると言える。
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