Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
今年度は,まず,研究計画にあるとおり,ヤマトシロアリにおけるカースト間対立が投資性のばらつきに与える影響を調べるための理論研究を行った.その結果は,カースト間対立が強まると有翅虫体サイズのばらつきが大きくなることを示しており,仮説の一般的妥当性を証明することができた. また,昨年度得られた「ヤマトシロアリの補充女王は単為生殖によって生産される」という新知見に基づき,進化生物学における最大の謎である性の維持問題に対する新たな仮説を立案し,その理論的検証を行った.すなわち,ヤマトシロアリの野外コロニーでは王・女王の組合せが創設王と補充女王の組合せからなるが,もし補充女王が創設王の娘の場合,次の世代の血縁度は創設女王より創設王の方が高くなってしまう。この血縁度に関わる対立を解消するため創設女王は単為生殖により補充女王を生産していると考えられるが,このことは野外において,単為生殖を巡って性的対立が起こりうることを示している.しかしながら,従来の研究では単為メス・オス間の完全な生殖隔離を暗黙の前提としているため,このような視点に立った研究は行われていない.そこで,単為メスをも受精させることができる形質がオスに進化可能であると仮定した数理モデル・シミュレーションモデルを作成したところ,そのようなオスの存在は,単為生殖の維持に大きく寄与するだけでなく,単為メスにも利益を与える場合があることが示された. これらの研究は各学会において発表済みであり,また,日本生態学会近畿地区から研究奨励賞が授与された.さらに,この研究に関する論文を2報執筆し,現在国際学術誌に投稿中である.
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