Research Abstract |
超低損失送電を可能にする次世代超伝導線材用材料の開発を目標として、液体窒素温度で応用可能なREBa_2Cu_3O_y(RE:希土類元素)酸化物高温超伝導体に着目し、有機金属堆積(MOD)法による安価かつ安定な作製プロセスの開発を検討した。また成膜用原料として現在超伝導線材開発の主流であるフッ素原料を使用しない、F-freeプロセスが本研究の独創的な点である。本プロセスを確立することでより安価・短時間かつ低環境負荷プロセスの構築が期待できる。 本研究では磁場中でも高い超伝導特性(転移温度,臨界電流密度:J_c)を示すことが知られているGd系超伝導体を基本として焼成条件が結晶成長と超伝導特性に及ぼす影響について検討した。その結果、本原料(ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属塩)を用いたプロセスは従来プロセスと比較して高温かつ低酸素分圧雰囲気中で成長し、特に結晶成長温度でのガス雰囲気による影響が顕著であった。これは結晶の核形成から成長・分解までがわずか20-30℃程度の狭い範囲で急激に進行していることを示唆していた。また、より高特性を目指した新材料として希土類元素を複数とした混晶系材料の開発を行い、REサイトを2-4元素すなわち(Sm,Eu,Gd),(Sm,Ho)及び(Nd,Eu,Gd,Er)の混晶とすることで実用化目標(J_c>1MA/cm^2, at self-field, 77.3K)を超える高い超伝導特性が得られることを示した。超伝導材料の高磁場応用を目的としたMOD膜中へのピニング材料の導入についてはAu,Pt,Zr,Sn等を用いた検討を進めており、Au,Pt,Zrについては既にこれらを組織内に有するMOD膜の作製に成功している。これら結晶成長のメカニズムや新規超伝導材料の検討、及びピニング材料の導入については現在九州大学の山田和広氏との共同研究により透過型電子顕微鏡を用いた微細構造解析により詳細な検討を進めている。
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