Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2009: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Research Abstract |
本年度の研究は,欧米諸国の資本市場は長期的に自社株買いの公表を好意的に評価している一方で,わが国の資本市場は長期的には自社株買い公表に好感しないことが先行研究において明らかにされているが,その原因については究明されてこなかったことに関して,新たな一定の科学的証拠を提示することを課題としている。とりわけ自社株買いに伴う経営者の利益数値制御とそれに対する資本市場の評価に焦点を当てて研究を実施した。ここではSloan(1996)によって示された会計発生高アノマリーの考え方を援用して,自己株式の取得における経営者の裁量的会計発生高の利用とそれに対する市場の評価を究明した。そして分析の結果から,会計発生高と資本市場の関係性に着目し,わが国における自社株買いに対する長期的なマイナスの評価の一因が自社株買い公表前の経営者の利益数値制御にあることを発見している。特に,自社株買い公表前に経営者が利益捻出を行っている場合に,資本市場はマイナスの評価を行っていることを報告している。このような検証結果は,健全な資本市場の構築に資するものである。 さらに過年度においては経営者が自己株式の取得を公表ないし実施する動機として,経営者が自己株式が市場において割安に評価されていることを市場参加者へ伝達するシグナリング目的を中心に研究を行ってきたが,本年度においては他の経営者の自社株買い公表ならびに公表後の実施に関するインセンティブをより包括的に捉えて,どのような動機をもとにわが国経営者が自社株買いを行っているかを明らかにしている。 以上の研究成果は博士論文の一部であり,現在,和文ならびに英文で論文を取り纏めており,査読付きの学術雑誌へ投稿予定である。これら成果は,会計やファイナンス研究のみならず,資本政策全般や財務情報適時開示のあり方をめぐる企業レポーティングにも資するものである。
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