Research Abstract |
β-1,3-キシランは、原始紅藻アマノリ属や緑藻イワヅタ属の細胞壁を構成する海藻特有の多糖である。本研究ではまずβ-1,3-キシランからのエタノール生産技術の確立を目指した。β-1,3-キシランのキシロースへの糖化には海洋細菌Vibrio sp.XY-214株由来のβ-1,3-キシラナーゼとキシロシダーゼを用いた。また、多くの酵母はキシロースをエタノール発酵に利用できないため、XY-214株由来のキシロースイソメラーゼを用いてキシロースをキシルロースに変換した。これをSaccharomyces cerevisiae NBRC 0249株に与えてエタノール発酵させたところ、発酵48時間後には30g/Lのキシルロースから4.7g/Lのエタノールの生成し、XY-214株由来の3種類の酵素がβ-1,3-キシランからのエタノール生産に有用であることが示された。近年地中海において変異型イチイヅタが異常繁殖し漁業や生態系に被害を与えているが、これら酵素を用いることでイチイヅタに含まれるβ-1,3-キシランからのエタノール生産に大きな期待が寄せられる。 次に、アマノリと同じ科に属するウシケノリの細胞壁を解析した。本研究では、海洋細菌Vibrio sp.MA-138株由来のβ-マンナナーゼが有するマンナン結合モジュール(CBM27)を用いた。CBM27を緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合して蛍光プローブを構築し、これをウシケノリプロトプラストの再生過程において経時的に作用させ、細胞壁形成過程を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、再生12時間後に細胞表層の一部にマンナンが形成され始め、再生が進むにつれてマンナンが細胞全体を覆っていく様子が観察された。このように海藻細胞壁解析技術の開発により、アマノリなどの病原菌に対する抵抗力や品質に関与している細胞壁の構造研究に大きく貢献するものと思われる。
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