Project/Area Number |
09J05652
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早木 清吾 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | プロトン移動反応 / 溶媒和ダイナミクス / RISM-SCF-SEDD法 / flexible-RISM法 / イオン液体 / 不均一構造 / 溶媒和の緩和 / 励起状態 / RISM法 / ラマン強度 / 構造揺らぎ / 3D-RISM法 / 溶媒効果 / π-πスタッキング / 統計力学 / RISM-SCF法 / 溶媒和構造 / 分子内構造揺らぎ / Diels-Alder反応 / S_N2反応 |
Research Abstract |
本年度は、イオン液体[bmim][PF6]中におけるN,N-ジエチルアミノ-3-フラボノール(DEAHF)の励起状態分子内プロトン移動反応に取り組んだ。本反応は励起波長によってプロトン移動反応の収率が変化することが報告されており、これは、イオン液体中の不均一構造によって異なる溶媒和環境に置かれた分子を選択的に励起している為と考えられている。イオン液体の不均一構造が溶媒和ダイナミクスや反応ダイナミクスにどのような影響を及ぼすかを分子レベルで明らかにすることは、イオン液体の溶媒和の性質の理解のみならず、溶媒和環境の調整による反応制御の可能性にも繋がり、非常に意義深いと言える。 イオン液体中の励起状態反応を扱う為に、TDDFT法を組み合わせたRISM-SCF-SEDD法を用いた。通常のRISM法においては、溶媒分子の分子構造を固定している為、イオン液体のアルキル鎖の構造揺らぎを考慮できないという問題があった。そこで、溶媒分子の分子内構造揺らぎを分布関数という形で記述するflexible-RISM法を援用することで、構造揺らぎの自由エネルギーへの影響を考慮し、一般的なイオン液体中の反応を扱う為の枠組みを構築した。 吸収・発光エネルギーを求めたところ、定常分光による実験値を0.21eVの精度で再現した。電子移動反応やプロトン移動反応などの超高速反応において、溶媒和の揺らぎが反応素過程に大きな影響を及ぼすことが知られている。そこで、励起後の溶媒和の緩和を考慮した自由エネルギー曲面を求め、プロトン移動反応過程が溶媒和の緩和と比較して充分速く進行するという仮定の下で解析を行ったところ、励起直後は溶媒和の緩和が起きていない為にプロトン移動反応は容易に進行するが、励起状態で溶媒和が平衡状態に達すると、反応障壁が大きくなりプロトン移動は起こりにくくなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶媒和の揺らぎを考慮した自由エネルギー曲線を求める手法を確立したことから、電子移動反応やプロトン移動反応において生じる溶媒和ダイナミクスを記述することが可能になり、それはイオン液体のような複雑な溶媒における励起状態反応に対しても有効であることが確認出来た。この手法においては、溶媒和構造を一次元で表した動径分布関数が得られる為に、動径分布関数から三次元溶媒和構造を再構築する手法を用いることで三次元溶媒和構造のダイナミクスについての情報を得ることが可能である。以上のことから、研究の目的であった三次元溶媒和構造のダイナミクスを記述する手法の確立は達成され、計画はおおむね順調に進展しているものと評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の枠組みでは、プロトン移動反応のような結合の組み換えが起こる場合、反応座標と溶媒和座標が結合しないとの仮定をおいている。よって、反応ダイナミクスと溶媒和ダイナミクスの関係を明らかにする為には、溶液内反応の時間発展を追う必要があると考えられる。そこで、Aonoらの溶液内反応空間ハミルトニアンに基づくシミュレーションを行い、DEAHFの励起状態分子内プロトン移動反応の時間発展を計算する予定である。励起波長依存性は溶媒和座標に対しての初期座標の依存性として表されると考えられ、励起波長依存性を再現し、その反応と溶媒和の過程を詳細に解析することで、DEAHF分子の励起波長依存性と反応ダイナミクスの関係を解明することが期待出来る。
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