メゾスコピック系の非平衡状態における電子相関効果・干渉効果の理論的研究
Project/Area Number |
09J06752
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
原子・分子・量子エレクトロニクス
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桐野 俊輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2009 – 2010
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2010)
|
Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
|
Keywords | 非平衡定常状態 / 一次元系 / 強相関電子系 / 時間依存密度行列繰り込み群 / 絶縁破壊 |
Research Abstract |
本年度は強相関電子系における非平衡輸送について、以下に記す研究を行い、その内容を学位論文にまとめた。 [1]直列二重量子ドット系における非線形輸送 直列二重量子ドット系は、各ドットが奇数個の電子を持つとき、近藤効果と2つのドット間の交換相互作用との競合が輸送現象に現れることが知られている。特に、両者の競合のクロスオーバー領域で完全伝導を示すことがスレーブボゾン平均場理論及び数値繰り込み群法によって明らかにされている。また、共鳴幅と比べてドット間のホッピングが大きいとき、各ドット・リードの近藤一重項の間に結合・反結合状態が形成され、微分コンダクタンスにこれを反映したダブルピーク構造が現れることがnoncrossing approximation(NCA)などによって指摘されている。我々はこの系の非線型伝導を調べるため、時間依存密度行列繰り込み群による精密計算を行い、このピーク分裂が実際に現れることを示した。また、NCAで得られた微分コンダクタンスの異常な増大が、スレーブボゾンの導入による人為的なものであり、時間依存密度行列繰り込み群からは得られないことを見出した。 [2]一次元Mott絶縁体の絶縁破壊 Half filledの一次元Hubbard模型では、有限の斥力相互作用Uによって電荷ギャップが生じ、基底状態がMott絶縁体となることが知られている。我々は前年度より、この状態に局所的な電圧降下を加えることで絶縁破壊のプロセスを数値的にシミュレートし、絶縁破壊後に形成される非平衡定常状態の性質を調べてきた。その結果、(a)バイアス電圧が電荷ギャップ以下のときは定常的な電流は生じないのに対し、バイアス電圧が電荷ギャップを上回ると定常電流が流れること、(b)バンド幅・クーロン相互作用といったエネルギースケールにくらべて電圧が小さい領域では、電流・電圧特性が電荷ギャップだけでスケールされることがわかった。これらの結果を論文(JPSJ Letter)として発表するとともに、国際学会(SCES 2010)において発表を行った。 [3]近藤絶縁体の絶縁破壊 一次元周期的Anderson模型のhalf-fillingでの基底状態は、有限の電荷ギャップを持つ近藤絶縁体であることが知られている。 本研究では一次元Mott絶縁体の場合と同様に、局所的な電圧効果による近藤絶縁体の絶縁破壊をシミュレートし、電流・電圧特性を調べた。一次元Mott絶縁体と近藤絶縁体及びバンド絶縁体の非線形電流を比べると、二つのスケーリング変数を使ってユニバーサルな関数となることが(数値計算の範囲ではあるが)示すことができた。中でも電圧依存性は3つのモデルで同じ形になっており、個々の一次元絶縁体の性質の違いからは容易に想像できない興味深い共通点となっている。
|
Report
(2 results)
Research Products
(5 results)