Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
駿河湾,相模湾および高知県沿岸から産出した間隙性貝形虫類について次の研究を行った.Cobanocythere属2種,Paracobanocythere属2種(共にCobanocythere科)の未記載種について詳細な形態観察を行い,既知種(25種)と比較した結果,形態学的に近縁性が示唆される5つのグループの全てが,日本とガラパゴスの両方に分布することが明らかとなった.この結果は,本科の歴史の中で汎地球的な分散が複数回起こったことを示唆しており,間隙性分類群における「低い分散能力」という推察に対して再評価を迫る重要な知見となる.また,Parvocythere属の2未記載種の形態観察を行い,既知種(14種)と比較した.その結果,背甲および付属肢に祖先的な特徴を有する種群と,より縮退的な特徴を有する種群の2つの種群の存在を新たに認めた.この結果は,本属が間隙性分類群として成立した後に縮退的な特徴を派生したことを示しており,間隙性貝形虫類の「間隙環境への進出後の特殊化」という進化的な段階を裏付ける証拠となる.さらに間隙性と表在性の両方の分類群を含むCytheroma科において分子系統解析と形態比較を行った.その結果,本科の単系統性が強く支持されると共に,間隙性Microloxoconcha属の背甲と付属肢の構造に単純化の進化的傾向が認められた.加えて,それらの単純化は機能的な重要性が低いと考えられる部位で認められた.これらの結果は,間隙性分類群に認められる特徴が,単純化と機能の保持との兼ね合いのもとで進化的に形作られたことを示唆する.Bairdia上科に属するNeonesidea属に間隙性の未記載種が認められ,分子系統解析からも本種がNeonesidea属に属することが確認された.形態比較の結果,本種は同属の表在性種より体サイズが有意に小さいが,付属肢などに特殊化は認められなかった.この結果は,間隙性貝形虫類の「体サイズの小型化のみによる間隙環境への進出」という進化的段階を裏付けると同時に,この仮説が貝形虫類ひいては,他の無脊椎動物全体に適用できる可能性を示唆する.
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