Research Abstract |
神経筋骨格システムを構築し,実際の運動データを用いて同定,解析を行った.神経筋骨格システムは,筋骨格モデル,筋動特性モデル,固有感覚受容器モデル,中枢神経系モデル,神経筋ネットワークモデルから成り,情報工学,医学,解剖学,神経生理学等様々な分野における知見を含んだものとなっている.このシステムを用い,以下を示した.まず,筋紡錘,Golgi腱器官等の固有感覚受容器,末梢神経の幾何学的構造などをモデル化し,体性反射システムを詳細に構築した.歩行,ジャンプ,スクワットなど複数の運動データを用い,体性反射における遅れ時間をパラメータとして同定及び相互検証を行った結果,実際の人体において適当と考えられる時間遅れを考慮したモデルにおける同定及び相互検証結果が最も良いものとなった.これは,人体の運動パターンが解剖学的な神経構造により特徴付けられていることが,情報的なモデルにより見えてきたことを指名している.次に,独立成分分析を用いて筋活動データより随意的運動指令信号の推定を行った.独立成分と,筋活動度及び脊髄神経枝⇔筋の結合から求まる脊髄神経枝活動度の間には1対1の高い相関が見られ,これは独立成分を各脊髄神経枝に伝達することで全身の筋活動そして,運動を生成する可能性を示唆している.最後に,体性反射システムと随意運動システムの関係について,両者間の重み付けを考慮して同時に学習を行うことで,両者間の相互干渉を考慮した同定を可能にするアルゴリズムを提案した.また,ここで得られる体性反射システムのパラメータと,神経生理学の実験であるH反射から得られるH波最大/M波最大比が同一のパラメータを指すことを示した.それにより,神経筋骨格システム,運動データ,最適化,神経生理学実験を用いることで随意及び不随意運動信号を分離できる可能性を示した.
|