Research Abstract |
1.浅水域における放射伝達(光の伝搬)過程を,任意の光学条件について高精度に再現するプログラムを開発したこのプログラムは,水中の放射伝達過程を支配する放射伝達方程式を,モンテカルロ法によって解くものである.このようなプログラムは,国内では未だ開発された例がなく,今後,浅水域の光環境の理解や,リモートセンシング・アルゴリズムの開発に貢献することが期待される. 2.開発したプログラムを応用して,浅水域のリモートセンシングに広く用いられている放射伝達モデルの成立性を検証した.その結果,放射伝達モデルは概ね成立するが,水深が小さく底面反射率が大きい条件下で,内部反射成分に起因して成立性が低下することが明らかになった.そこで対策として,内部反射成分を考慮したより高精度な放射伝達モデル,および従来の放射伝達モデルの不成立性を簡単な数式で表現したモデルを開発した. 3.高空間分解能マルチスペクトル衛星画像を用いた水深のリモートセンシング・アルゴリズムに関して,既存のアルゴリズムの中で光学的根拠・簡便性・拡張性を備えたLyzengaのアルゴリズムの更なる改良を試みた.同アルゴリズムの問題点として,水・大気の光学特性に関する強い空間的均一性の仮定に着目し,仮定を緩めたアルゴリズムを開発した.新しいアルゴリズムは,テイラー近似を利用して線形回帰予測の形で提案され,Lyzengaのアルゴリズムの長所である簡便性・拡張性を維持している.新しいアルゴリズムをサンゴ礁水域に適用した結果,水深既知画素が十分にある場合,Lyzengaのアルゴリズムよりも優れた予測精度を与えることが確認された.開発したアルゴリズムは,音響測深が難しいサンゴ礁・岩礁帯の測深や,粗い測深結果の高密度化のための有望な手段である.
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