Research Abstract |
本年度は,治療プログラムの開発を目的として研究を実施した。まず,海外において腰背部痛などの一般的な慢性疼痛罹患者を対象に,痛みに対する破局的思考の減少を目的とした治療プログラムの介入研究や文献(例えば,Smeets et al.,2006)を収集し,これまでの治療プログラムの構成要素を整理した。並行する形で,慢性疼痛や慢性頭痛に対する認知行動的介入の研究と臨床実践を報告している学会(例えば,The 43rd Annual Convention of the Association for Behavioral and Cognitive Therapies)に参加し,治療プログラム開発に関する知見を得た。また,痛みに対する破局的思考の各要素が頭痛の臨床症状と痛みの維持・悪化要因に与える影響を明らかにするため,緊張型頭痛罹患者を対象に質問紙調査で得たデータを用いて検討した。その結果,緊張型頭痛罹患者へ痛みに対する破局的思考の減少を目的とした介入を行う場合には,特に反すうと無力感に着目する必要性が示された。以上の結果を踏まえて,全3回(週1回60分)の治療プログラムを開発した。具体的なプログラム内容としては,1週目に心理教育,セルフモニタリング,リラクセーション法,2週目には痛みに対する破局的思考と感情,日常生活支障度との関連の理解と破局的思考の特定に焦点をあてたセッション,そして3週目では痛みに対して適応的な思考への転換を目的としたセッションである。なお,完成したプログラムは,頭痛専門医に内容を確認してもらい,修正点や改善点について議論した。今後は,実際に本プログラムを対象者に実施し,治療プログラムの短期的効果と長期的効果を検討するとともに,それらの効果を先行研究で確認されている他の治療法の効果と比較検討する予定である。
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