Project/Area Number |
09J08864
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Nanomaterials/Nanobioscience
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 章玄 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2011: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2010: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 鉄還元細菌 / 細胞膜タンパク質 / フラビン分子 / 酸化還元反応 / ヘム鉄 / 細胞外電子移動 / 微生物燃料電池 / シトクロム / 細胞外電子移動過程 / Cytochrome / Shewanella / Electrochemistry / Cyclic Voltammetry / Iron-reducing bacteria |
Research Abstract |
本研究課題の目的である、生体電子移動の高速化へ向けて、鉄還元細菌Shewanellaをモデル細胞として用い、その細胞外電子移動をその場観察するための分光、ならびに電気化学的手法の開拓を行った。これまでにも、微生物の界面電子移動機構については、精製タンパク質や遺伝子解析を用いた研究が盛んに行われている。一方で、in-vivo条件下において細胞膜上で機能するタンパク質の働きを直接捉えることは実験的に大きな困難を伴うため、多くの点でその機構は未解明のままであり、報告されている電子移動機構の多くは、推測の域を出ないものになっていた。以上の観点から、本研究員は微生物アノード電流密度の向上を目的として、該当分野のモデル微生物である鉄還元細菌Shewanellaを研究対象に、生体電気化学、ならびに分光学的手法の開拓を行うことで、in-vivo電子移動機構にこれまで3年間迫ってきた。その中で、in-vivo電子移動追跡法を開拓し、世界で初めて膜タンパク質の電気化学シグナルの帰属をタンパク質レベルで決定し、EET追跡法の確立を行った。これらの成果は総説執筆の依頼を受け、書籍Recent Trend in Electrochemical Science and Technologyの中の一章として掲載されている。 本年度、これまでに開拓したin-vivo電子移動追跡法を基に本研究員は鉄還元細菌Shewanella自己分泌物であるフラビンのEETにおける役割を検討した。フラビン分子によってEETが10倍程度直ちに高速化することが既報において実験的に確かめられており、微生物と電極の間をフラビン分子が電子メディエーターとして拡散・往復する「シャトリングモデル」がそのEET高速化機構として考えられていた。しかし、この高速化モデルには膜タンパク質からフラビンへの間に大きなエネルギー障壁があり、電子移動が熱力学的にほとんど進まないという決定的な矛盾があった。そこで、本研究員がフラビン分子と膜タンパク質の相互作用に関して、in-vivo電気化学の手法を用いることで詳細に調べたところ、膜タンパク質のひとつMtrCとフラビン分子が特異的に相互作用していること、さらにそのMtrCと相互作用しているフラビン分子の量が微生物代謝電流値と正比例の関係にあることを実験的に確かめた。さらにこのような膜シトクロムとフラビン分子の相互作用は、既存のフラビン結合サイトを持っていない膜タンパク質を持つ他微生物においても普遍的な現象であることがその後の実験から明らかになっており、新たなフラビン分子結合サイトの発見に繋がる、生化学の分野において極めて学術的意義の高い成果となることが期待される。本研究員はこの他にも、微生物が集団内で長距離の電子移動過程を媒介する機構にin-vivo電子移動追跡法を基に迫り、微生物燃料電池など実用的な分野へ貢献する成果を世界的学術雑誌であるBioelectrochemistryにおいて発表した。 また、EET機構の成果を基に鉄パイプライン防蝕技術の共同開発をJX日鉱日石エネルギー株式会社と行っている。
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