戦後のドイツ語圏文学における「語られる記憶」と女性のエクリチュールの批判的考察
Project/Area Number |
09J10408
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
ヨーロッパ文学(英文学を除く)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西尾 悠子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2009: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | ウーヴェ・ヨーンゾン / Jahrestage / 記念の日々 / Heimat/故郷 / Nicht-Heimat/非-故郷 / 声 / メディア / 故郷の喪失 / 異他性 / 故郷ではない場所 / 東ドイツ / 戦後のドイツ語圏文学 / 女性のエクリチュール / 男性作家の描く女性像 |
Research Abstract |
平成23年度は、昨年度中に行ったドイツでの在外研究をより発展させることに努めた。昨年度に引き続き、東部ドイツ出身の作家ウーヴェ・ヨーンゾンの長編四部作『記念の日々』Jahrestageにおける「故郷Heimat」像および「非-故郷Nicht-Heimat」像を中心に研究を続行した。 6月にヨーンゾン協会主催の第一回国際ドクトラント・ワークショップ(ロストック/ドイツ)にて研究発表を行った。準備中である博士論文の大まかなアウトラインの紹介も兼ねた本研究発表では、昨年ドイツで執筆したゼミナール論文を踏まえ、D.E.とAnitaという二人の登場人物を例に、『記念の日々』における「故郷」をめぐる問題を取り上げた。ロストックで発表した研究成果をより具体化させることを目指し、10月には日本独文学会2011年秋季研究発表会(金沢大学)にて研究発表を行った。本研究発表をもとに執筆した論文は、平成24年3月刊行の大学紀要『言語情報科学』第10号に掲載された。 平成24年3月には第54回ドイツ文化ゼミナール(IPC生産性国際交流センター)に参加し、ドイツ語にて研究発表を行った。女性主人公のゲジーネの頭の中でのみ展開される「死者/生者との架空の対話」の分析に重点を置いた本研究を進めていく過程で、『記念の日々』において「声」というメディアが故郷をめぐる問題と密接に関わっていることが明らかになった。本作品の根幹を成している「(コミュニケーションの媒介として機能するあらゆる)メディア」「エクリチュール」「記憶/想起」「歴史」「罪/贖罪」などの問題は、複雑に絡み合う「故郷」、とりわけドイツ語圏文化における「故郷Heimat」の問題を語る上で無視することはできない。 上記の研究状況を踏まえた上で、本年度は所属専攻に博士論文執筆資格審査を申請し、現時点における博士論文のアウトラインを提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は『記念の日々』における「故郷Heimat」のあり方について考察を行ったが、作品の核心を捉えるためには、「故郷」というモチーフおよび「故郷」から派生し得る問題について複眼的な視点から切り込む必要があると認識するに至った。当初の計画をやや修正した上で、研究を続行する。
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Strategy for Future Research Activity |
「故郷」をめぐる問題は、ドイツに限らず、今もアクチュアルなテーマの一つである。今後は『記念の日々』の持つ同時性にも注目し、ギュンター・グラスやハインリヒ・ベル、クリスタ・ヴォルフやインゲボルク・バッハマンなど、ヨーンゾンと同じく「故郷」について言及している同時代の作家も取り上げる。『記念の日々』の根幹を成している「メディア」「エクリチュール」「記憶/想起」「歴史」「罪/贖罪」などの問題も視野に入れた上で、今後も引き続き戦後のドイツ語圏文学において作家の性差はどの程度作品に影響を及ぼすか、性差を利用して新たな文学の可能性を切り開くことは可能かという問題について幅広く検討し、博士論文を執筆する。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)