カイコにおける昆虫サイトカインparalytic peptideの活性化機構の解明
Project/Area Number |
09J10519
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biological pharmacy
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健一 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 自然免疫 / サイトカイン / 一酸化窒素 / 昆虫 / 感染症 / 細菌 / カイコ / 歯周病菌 / 貪食反応 / 抗菌ペプチド |
Research Abstract |
これまでに私は、カイコの血液中に存在する昆虫サイトカインparalytic peptide(PP)が病原体成分により活性化され、免疫関連遺伝子の発現を誘導してカイコの細菌感染抵抗性に寄与することを報告している(Ishii et al., J Biol Chem. 2008,Ishii et al., J Biol Chem. 2010)。しかしながら、PPがどのようなメカニズムにより免疫担当細胞における遺伝子発現を誘導するかは不明であった。私は、PP注射後のカイコの免疫組織における遺伝子発現変動を網羅的に解析する中で、一酸化窒素合成酵素をコードする遺伝子(BmNOS)の発現量がPPにより上昇することを見出した。一酸化窒素(Nitric oxide,NO)は即時型の情報伝達物質として働くことが知られている。これらの知見に基づき私は、PPがNO産生を誘導することにより自然免疫系の活性化を引き起こす、という仮説を立てるに至った。 活性型PPをカイコに注射すると、一酸化窒素合成酵素(BmNOS)遺伝子の発現が誘導されると共に、NOの産生が亢進した。一方、NOS阻害剤は、PPによる免疫関連遺伝子の発現誘導を抑制した。また、NOを発生させる薬剤のカイコへの投与は、免疫関連遺伝子のmRNA量を増大させた。 さらにNOS阻害剤は、PPによるカイコの黄色ブドウ球菌による感染死に対する延命効果を抑制した。以上の結果は、昆虫サイトカインPPがNOを産生させることにより免疫関連遺伝子の発現を導き、個体の感染抵抗性の上昇を果たすことを示唆している。 これまで無脊椎動物の自然免疫系においてNO産生を誘導する仕組みは報告されておらず、本研究が初めての例である。拡散性の情報伝達物質であるNOがPPの下流で働くことは、複数の組織での免疫応答を即時的に活性化する上で合理的であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで殆ど研究されていなかった昆虫サイトカイン(情報伝達物質)による自然免疫系の制御機構について、cDNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を実施することにより、昆虫サイトカインの下流で一酸化窒素が関与するという新しい知見が得られた。本研究により、進化上保存された自然免疫系の根幹に関する理解が深まったと考えられる。
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Report
(3 results)
Research Products
(11 results)