極低温電子顕微鏡によるべん毛タイプIII蛋白質輸送装置の構造解析
Project/Area Number |
09J55342
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Structural biochemistry
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川本 晃大 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 蛋白質 / 電子顕微鏡 / べん毛モーター / トモグラフィー / ナノ計測 |
Research Abstract |
本研究は、サルモネラ菌のべん毛を研究材料として、べん毛蛋白質輸送装置の立体構造および蛋白質間相互作用を捉えることによって、輸送過程における輸送装置のダイナミクスと効率的な輸送のメカニズムを解明することを目的としている。本年度は、サルモネラ菌のミニセルを作成し、機能状態のべん毛基部体の立体構造解析を行うことで、細胞内での輸送装置の構造を明らかにした。 前年度までの研究結果から、FliH/FliI複合体がCリング縁の内側に結合することを明らかにしたが、細胞内で機能中の輸送装置の構造が明らかにされていないため、どのような構造変化を経て輸送過程が進行していくのか、その詳細な輸送メカニズムの解明には至っていない。そこで、細胞内の輸送装置の構造を明らかにするため、べん毛基部体を菌体から単離精製することなく、細胞膜に埋まった状態のまま、低温電子線トモグラフィーによって構造解析を行った。電子線は加速電圧300kVでも厚さ1μmのサルモネラ菌を透過しづらく、そのため菌体内の立体構造を可視化することが難しい。そこで、細胞分裂を促進させるFtsZ蛋白質を大量発現させることで、サルモネラ菌の運動能や機能を失うことなく、直径約0.4μmの球形ミニセルの作成に成功した。また、電子線トモグラフィーによって得られた基部体の平均像と単離精製した基部体の単粒子像解析による立体像を比較することで、輸送装置に対応する密度分布を同定した。輸送装置は2つのリング構造を形成し、6種類の膜蛋白質で構成されている輸送ゲートと合わせて、3つの部分構造で構成されていることが明らかとなった。今後は、各部分構造の構成蛋白質やドメインを同定し、輸送装置の詳細な構造、機能解析を行うことで輸送メカニズムの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、サルモネラ菌から単離精製したべん毛基部体に、別に大腸菌で大量発現し精製したサルモネラ菌の輸送装置構成蛋白質を加えることで、試験管内でべん毛蛋白質輸送装置の再構成を試みる予定であったが、結合が弱く再構成は困難であった。そこで、サルモネラ菌ミニセルの低温電子線トモグラフィーを用いることで、今まで不可能であった細胞内での輸送装置の立体構造が明らかになった。この手法では機能状態の輸送装置の構造を明らかにすることができ、より詳細な輸送メカニズムの解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内のべん毛基部体では、輸送装置は2つのリング構造を形成し、6種類の膜蛋白質で構成される輸送ゲートと合わせて、3つの部分構造を持つことが明らかとなった。しかしながら、各部分構造がどの蛋白質やドメインで構成されているのか、その詳細は不明である。そこで、輸送装置の各構成蛋白質を欠損させたサルモネラ菌ミニセルを作成し、低温電子線トモグラフィーにより基部体の立体像を数多く得て、その平均化を行うことで分解能を上げ、各構造の構成蛋白質を同定する計画である。すでにX線結晶構造解析等で明らかとなっている蛋白質の構造を基部体の平均像に当てはめることができれば、より詳細な輸送メカニズムの解明が期待される。
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Report
(3 results)
Research Products
(16 results)