Research Abstract |
インフルエンザ肺炎に代表される急性肺障害(ALI/ARDS)では、気道上皮および免疫細胞のアポトーシスの病態への関与が指摘されている.インフルエンザウイルス感染症においてもアポトーシス関連酵素(カスパーゼなど)が活性化されることが報告されており,インフルエンザウイルスと肺炎球菌を重複感染させた重症肺炎モデルでは特に活性化していることが予想される.我々はこの重複感染マウスモデルの摘出肺からRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作成した後,酵母を用いたカスパーゼの活性化因子の同定システムを用いて、caspase-8,7を活性化する因分のスクリーニングを行った.その結果,既知の分子ではあるものの,アポトーシスに重要な因子であるFas, FADD, caspase-2, caspase-3, caspase-7, caspase-8などの分子がクローニングされた.これらのin vivoでの活性を確認するため,上記重複感染マウスとそれぞれの単独感染マウスの肺を用いて,カスパーゼの発現量や活性の測定,TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出などを行った.その結果,インフルエンザウイルス,肺炎球菌それぞれの単独感染において,時間経過とともに,effector caspaseの一つであるcaspase-3や,その上流に位置する外因性のinisiator caspaseであるcaspase-8の開裂,活性化と,TUNEL陽性細胞の増加を認めた.更に重複感染マウスでは,単独感染と比較し肺炎球菌感染後早期にこれらの因子の強い発現,活性化が認められ,インフルエンザ関連細菌性肺炎の重症化にアポトーシス関連因子の強い発現が関与していることが示唆された.現在,病態との関連性,治療のターゲットとなりうるか等検討するため,各種カスパーゼ阻害剤を用いて更に検討を行っており,siRNA,アンタゴニスト抗体などを使用し,詳細な検討を行う予定としている.現時点では本研究と同様の実験は報告されておらず,今後のインフルェンザ関連重症細菌性肺炎や類似する致死性の重症肺炎の病態解析や治療の進歩に本研究が大いに貢献するものと考えられる.
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