Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
人は様々な運動を巧みに行うことができる,この運動制御機構において予測機構が重要な役割を果たしている.人の運動制御系において,見えてから腕を動かし始めるのに少なくとも100ミリ秒以上必要である.従って,ボールを打つ運動などでは,飛んできたボールの視覚情報から,ボールを打つ位置と時間を予測し,手腕の運動を計画する必要がある.このような観点から,本研究では,この予測機構の存在とその役割に焦点を絞り,認知・運動と予測に関する統合機構の解明を目指す.本計測実験では,ボールをキャッチする運動を模擬した運動計測環境を構築した.ボールに関する視覚情報はモニタ上に表示(左から右にボールが飛んでくるように表示)し,被験者の手先位置をモニタ上に表示した,キャッチングの際に受ける衝撃力はスライドモータを制御することにより手先に与えた.運動課題は,モニタ上で飛んできたボールを見て,そのボールをキャッチすることである.この運動計測では,手先軌道,前腕および上腕の屈筋と伸筋の筋電信号,手先力,腕の姿勢をそれぞれ計測した.計測した筋電信号を解析した結果,ボールが手に当たる時刻(つまり,スライドモータにより手先に衝撃力が与えられる時刻)の150ミリ秒程度前から屈筋と伸筋の同時活動がみられた.さらに,この同時活動の開始時刻と衝撃力による手先位置の変動(最初のピーク位置)の大きさの関係について調べたところ,同時活動の開始時刻に対応して手先の振動の大きさも変化した.さらに,試行を繰り返す過程にいて,手先の振動が小さくなるように同時活動の開始時刻がある値に収束した.この結果から,ボールをキャッチする運動などにおいて,手先の振動が小さくなるように同時活動の開始時刻を計画していることを示唆しており,さらに同時活動による腕の粘弾性も調節している可能性を示唆する結果が得られた.今後,予測と運動の安定性,および粘弾性との関係について理論的に考察する予定である.
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