Project/Area Number |
10710018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Fine art history
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
真野 宏子 早稲田大学, 文学部, 助手 (40298120)
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Project Period (FY) |
1998 – 1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1999: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 抽象絵画 / キュビスム / カンディンスキー / R.ドローネー / ピカソ |
Research Abstract |
本研究は昨年度の考察に続くものであり、これまで否定的に捉えられたきたカンディンスキーとキュビスムの繋がりに新たな解釈を加えるものである。今年度は特に、第一次世界大戦直前のカンディンスキーの作品と、当時キュビストとして注目されはじめていたロベール・ドローネーの作品にみられる造形上の諸特徴を比較・検討し、カンディンスキーの「抽象絵画」成立期におけるキュビスムの重要性を改めて指摘するとともに、カンディンスキーがピカソとブラックに続くキュビストのなかでもドローネーに接触した理由を明らかにし、抽象を推し進めるにあたって彼が拠り所としたものを考察した。1911年の秋、写真でドローネーを知ったカンディンスキーは、ドローネーへ積極的に働きかけて同年末の通称「第1回青騎士展」へ出展させ、書簡のやりとりを重ねる。先学の研究では、カンディンスキーに紹介されて実際にドローネーのもとを訪れたクレー、マルク、マッケとドローネーの影響関係が問題視され、明らかにされてきた。ドローネーの《窓》や《円環》のシリーズとカンディンスキーの「抽象的な」作品との類似を指摘する論考もいくつかあるが、むしろそれらに先行し、彼が実見している《サン・セヴラン教会》《エッフェル塔》《街》のシリーズがピカソらのキュビスムと並んでカンディンスキー作品の生涯にわたる特徴である「枠構造」導入の契機となった点で重要だと考えられる。則ち、キュビスムの二次元性と三次元性の共存する画面は、新たな絵画空間を求めるカンディンスキーにとって大きなヒントとなり、枠構造という彼の生涯の特徴に結びついたのである。さらにピカソやブラックの対象の物質性への拘りに異議を唱えていたカンディンスキーが、ドローネー作品に対象の再現以上のものを感じとり、彼を自分と同じ精神性を持つキュビストと見なすことで、キュビスムの諸特徴を参照しやすくした点も検証された。
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