Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
α-トコフェロール輸送蛋白質(αTTP)は先天性ビタミンE欠乏症の原因遺伝子産物である。この疾患は、体内のビタミンEレベルが極端に低くなるのと同時に幼児期から主に脊髄小脳系の感覚神経が変性する神経疾患である。私は、昨年度末にαTTPノックアウトマウスの作製に成功した。すなわちαTTP遺伝子の第一エクソンをneo遺伝子の挿入により破壊した結果、得られたマウスの血中ビタミンE値は野生型:ヘテロ:ホモ=2:1:0であり、これは肝臓におけるαTTPの発現量に比例していた。従って当初の目的、すなわちαTTPによって体内ビタミンEレベルが一義的に決定されることが実験的に証明された。一方、αTTPノックアウトマウスは通常の食餌を与えていても血中ビタミンEレベルが検出限界以下であることから、遺伝的なビタミンE欠乏動物として各種病態解析のモデル動物として幅広い用途が期待された。そこで本年度はさらにこれらマウスのフェノタイプを解析した。結果として、(1) 雌は不妊であり、原因は胎生10日前後の胎盤の形成異常であること(2) 長期問(10ケ月以上)の飼育により、ふるえなどの行動異常をおこすことなどが観察された。しかもいずれもがα-トコフェロール過剰量添加食を与えることで改善することから、先天性ビタミンE欠乏症におけるビタミンE補充療法の有効性が示峻された。なお、ビタミンEが生体内の主要な抗酸化脂質であることから、本研究で作製されたαTTPノックアウトマウスは新しいタイプの酸素ストレスモデル動物として今後の幅広い用途が期待される。
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