Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
23年度は,昨年同様の研究項目について研究を実施し,昨年度の結果と総合して次の成果を得た。なお昨年末(3.11)の東日本大震災のため,海外特別研究員Clara Lordは一時帰国し,フランス自然史博物館のPhillipe Keith博士の研究室で本研究課題を継続実施した。 (1)ボウズハゼ属の系統解析:本属25種の内18種を収集し,それぞれ3つのmt遺伝子(COI,cytb,16S)と2核遺伝子(ロドプシン遺伝子,未発表遺伝子)の計3500塩基を読み,系統解析した。 (2)ルリボウズハゼSicyopterus lagocephalusの生物地理学:ルリボウズハゼの起源を明らかにするため,近年開発されたLemey et al。(2009)の生物系統地理学モデルを用いて,本種が過去100万年前に西部太平洋で派生したことを明らかにした。その後25万年前までに,海洋における仔魚期の分散を通じて東部太平洋およびインド洋にその分布を拡大したことを示した。サンゴ礁の形成に伴う集団の隔離機構を検討し,西部太平洋集団が中央太平洋集団とインド洋集団から隔離されていく過程についても知見を得た。 (3)ナンヨウボウズハゼStiphodon percnopetrygionusの生物地理学的研究:ナンヨウボウズハゼの生物系統地理学的知見を集積するため,小笠原,奄美,沖縄本島,石垣島,西表島,台湾から得た計107個体のCOIミトコンドリア遺伝子を解析したところ,わずか25ハプロタイプしか検出されず,異なる地域から得られた標本間の集団分化程度は低いものと考えられた。 現在,ルリボウズハゼの追加試料としてインド洋と太平洋を分ける障壁になっているパプアニューギニアから25個体を,またクック諸島から33個体を得て,cytb遺伝子の塩基配列を解読中である。この結果が出れば,ボウズハゼ属の両側回遊の進化過程をより明確に説明できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果は原著論文8編,研究発表5件,著書6編にまとめられており,今後も多くの論文発表が期待できる。2011年3月の震災・原発事故の影響と出産のためにプロジェクトの途中で一時帰国し,育児と平行して継続した研究の成果としては質量ともに目を見張るものがあり,賞賛に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
ボウズハゼ属の分子系統解析については,現在完模式標本と今回集めた標本について形態学的解析を進めている。さらに系統解析結果の信頼度を高めるために,核遺伝子をひとつ追加解析中である。これらの解析はまもなく終わるが,結果が出次第,最終的な分子系統樹を得て,2012年末までにボウズハゼ属の系統と分類に関する総説を書くことにしている。
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