高周期14族元素―炭素バイブリッド型π電子系化学種の創成及び特性解明
Project/Area Number |
10J00042
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Organic chemistry
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 裕明 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 有機化学 / ケイ素 / シリレン / シリレンラジカルカチオン / 二価化学種 / N-ヘテロ環状カルベン / X線結晶構造解析 / 多重結合化合物 / ジリチナシラン / トリシラアレン |
Research Abstract |
二価化学種カルベンのケイ素類縁体であるシリレンは、それら自身での多量化が進行しやすいため、最近まで合成すら難しい化合物群であった。最近では適切な置換基の設計による立体保護や電子的安定化を利用して、いくつかの安定シリレンの合成が達成されたものの、これまでに合成された化学種は炭素、窒素、ハロゲンなど、ケイ素に比べて電気陰性な元素で置換されたものに限られている。本研究ではシリレンの空の3p軌道に、強いσドナー性の配位子であるN-ヘテロ環状カルベンを配位させることで、はじめての電気陽性なケイ素置換基を持つシリレン-NHC錯体を合成・単離することに成功した。 また、シリレンの化学については精力的な研究がなされている一方、シリレンラジカルイオン種についてはほとんど報告例が無い。本研究では、合成に成功したシリル置換シリレンがエネルギー準位の高いHOMOに非共有電子対を持つことに着目し、化学的な一電子酸化反応を検討した。その結果、はじめてのシリレンラジカルカチオンの合成・単離にも成功した。さらに得られたラジカルカチオン種を一電子還元すると中性のシリレンがほぼ定量的に再生したことから、可逆な一電子酸化還元系となっていることもわかった。 X線結晶構造解析の結果、シリレン-NHC錯体は三配位ケイ素まわりがピラミッド化しているのに対して対応するラジカルカチオンでは三配位ケイ素まわりがほぼ完全に平面構造であり、一電子酸化によって分子構造が大きく変わることが明らかになった。さらにESRスペクトル測定およびNPA電荷分布計算から、不対電子は三配位ケイ素上にほぼ局在化していることを明らかにした。 これらの実験結果は、はじめて電子供与性の置換基を有するシリレン、応用的にも重要な新規のケイ素ラジカル種を合成しその性質を実験・理論の両面から明らかにした、という点で高周期14族元素化学に新たな知見を与えた。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)