Project/Area Number |
10J00142
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
森林科学
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
境 優 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | ニホンジカ / 下層植生 / 河床構造 / 堀潜型 / 固着型 / スギ人工林 / 破砕食者 / 土壌侵食 / 河川生態系 / 底生無脊椎動物 / 食物網 / 水文学 |
Research Abstract |
スギ人工林化やシカの増加によって大きく変貌した森林生態系が、渓流の底生動物群集にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とし研究調査を行なった。 スギ人工林は広葉樹林よりも、林床に豊富なスギリターをもたらし、シカ食害下において効果的に地表流流出を抑制していた。また、スギ人工林では河床にもリターが堆積しており、底生動物群集は破砕食者によって特徴づけられていた。以上より、スギリターは、デトリタス食者への安定的な餌資源の供給や、シカ食害下における土砂流出の抑制を通じて底生動物群集に影響することが示された。 次に防鹿柵に囲まれたシカ除去区と、食害区それぞれの天然林1次谷集水域を比較したところ、シカ除去区では下層植生が繁茂する一方で、食害区では林床が裸地化しており、地表流量と河床の細粒堆積物被度が共に食害区で高かった。底生動物に注目すると、食害区では堀潜型・収集食者が多く、細粒堆積物への耐性が弱い固着型・濾過食者が有意に少なかった。また底生動物群集の多様度はシカ除去区で高かった。以上より、シカ食害は、林床の裸地化を招き、表土流出に伴う河床の細粒化を通じて、源流域の河床構造の単一化と底生動物群集の多様性低下を引き起こすことが判明した。しかし、シカ除去区・食害区の2次谷では河床構造や底生動物群集構造に違いがなく、これらは、2次谷の大きな流速と流量が流入土砂を速やかに掃流することに起因すると考えられた。 その一方で、2・3次谷ではシカによる表土流出に伴う有機物インプットの増加が渓流の食物網構造を改変することを示唆するデータも得られた。これらの成果は、シカによる林床改変が水文プロセスを介して渓流-森林生態系に及ぼす影響に関して新たな知見をもたらした。今後これらの影響が、食物連鎖上位種まで及ぶかどうかを検証することは、森林-渓流生態系の繋がりを理解する上で重要な課題となるだろう。
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