Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
|
Research Abstract |
報告者は,中生代-新生代四足動物の骨形成の進化の解明に関連して,様々な環境に適応した現生および化石四足動物の肢骨内部構造の観察を行っている.2011年度は特に,化石水生四足動物における肢骨内部構造の進化の解明に焦点を当てた.研究手法としては,マイクロフォーカスCTスキャン(国立科学博物館,東京大学総合研究博物館,Universitat Bonn)を用いた骨内部構造の撮像,3Dレンダリングソフトを用いた3次元骨内部構造の構築および観察,骨組織切片の薄片検鏡による微細構造の観察を用いている. 哺乳類の骨内部構造の進化に関する研究 : 前年度に引き続き,水棲適応した哺乳類である鰭脚類(食肉類),水棲適応者とされているが骨内部構造の情報が欠如している束柱類(アフリカ獣類)の肢骨,肋骨の骨内部構造の観察を行った.その結果,(1)鰭脚類においては,陸棲食肉類と比較して骨内部の腔隙が失われ,特に骨幹部で骨緻密度の増加が確認された.また,(2)比較的原始的な束柱類に関しては現生のマナティーに似た骨内部構造の極端な緻密化が起こっているのに対し,派生的な束柱類デスモスチルスに関しては,現生の高度な水棲適応者に見られる長骨内部の海綿質化が起こっていること,さらに(3)これらの傾向は頭骨を除く全身の骨にあてはまることが明らかとなった.これらの内容に関しては,First International Symposium on Paleohistologyおよび71th Annual Meeting of the Society of Vertebrate Paleontologyにおいて発表を行った. カメ類の骨内部構造の進化に関する研究 : 30種余りの現生・化石カメ類の肢骨について内部構造の比較観察を行った.従来の研究では生息環境と骨内部構造に関連性が見られないとされてきたカメ類でも,3次元内部構造観察を踏まえて肢骨の最も緻密な断面で比較することにより,(1)陸生適応者では管状に近い構造を持つこと,(2)水生適応者では緻密骨が海綿質化しやすく,水棲適応度が高くなるほど骨が海綿質化すること,(3)半水棲カメ類では緻密骨が海綿質化しないこと,および(4)原始的化石カメ類のプロガノケリス(陸生)およびモンゴロケリス(半水棲)でも,生活スタイルと骨内部構造の関係が現生カメ類と同様に成り立つことが示された.これらの内容に関しては,First Intemational Symposium on Paleohistologyおよび71th Annual Meeting of the Society of Vertebrate Paleontologyにおいて発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
標本提供を依頼していた複数の博物館から予想以上に好意的な協力を得たため,現生哺乳・爬虫類だけでなく,多くの化石動物のデータから解析結果を得ることができた.これをもとに,前年度までは主に現生脊椎動物から得ていた解析結果を,化石動物と合わせることで各系統での骨内部構造の進化の全容が明らかになった.
|
Strategy for Future Research Activity |
カメ類だけではなく,化石爬虫類における水棲適応と骨内部構造の関係の普遍的法則性とそのメカニズムを明らかにするため,様々な系統で独立に水棲適応した爬虫類(メソサウルス,ホバサウルス,コリストデラ類,タラットサウルス類,鰭竜類,魚竜類,モササウルス類)について,カメ類と同様の3次元骨内部構造の解析を行う.また,陸生四足動物の典型とされる,軽量化した管状の長骨構造の起源を明らかにするため,原始的四足動物についても同様の解析を行い,生息環境の変化に伴う骨内部構造の進化の全容を明らかにすることを目指す.
|