Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
本研究は,自閉症スペクトラム障害(ASD)の表情認知の非定型について,先行情報(文脈)の利用という側面から研究を行っている。また自閉症の認知特性が自閉症者から定型発達者の間で連続的につながっているという"自閉症スペクトラム"の考えにのっとり,自閉症スペクトラム指数(AQ)を用いたアナログ研究を行っている。 本年度は,表情認知に関与する2つの属性である静的情報と動的情報のうち,動的情報に焦点を当てて検討した。場面情報を手掛かりに表情知覚を行うためには,表情変化という動的情報への感度も重要であると考えられる。事象関連電位(ERP)を用いた実験を行い,顔選択的に増大するERP成分N170を指標に検討した。N170は表情変化に伴って,陰性方向に増大することが知られている(Miyoshi et al., 2004)。変化前後におけるN170の増大分を,中立顔からhappy顔変化条件とanger顔変化条件で比較し,ASD特性との関連を調べた。結果,ASD傾向の高群は,低群に比べ,anger表情へ変化した際に表情変化に伴うN170の増大が生じていないことが明らかになった。一方,中立顔からhappy表情へ変化した際のN170の増大は,ASD傾向の高群においても保たれていた。 以上の結果は,ASD特性が高いほどanger表情への変化に対する運動情報の符号化処理が減衰していることを意味し,ASDは表情変化認知においてanger特異的に変化検出が困難である可能性を示唆した。またこれらの成果は現在学術雑誌への投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症スペクトラム障害における表情認知研究において,これまで焦点のあたって来なかった表情の運動知覚について検討したものである。本年度の結果は,日本臨床神経生理学会第42回大会において成果報告を行った際,座長推薦をうけて,International Federation of Clinical Neurophysiologyが刊行する学会誌Clinical NeurophysiologyのSociety Proceedingsへ投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
従来のASDにおける表情認知研究は,表情から他者の情動を読み取る際の一瞬を切り取った静的表情認知を中心に扱ってきた。しかし,自閉症スペクトラムの概念にあるように,高いASD傾向があっても診断閾下である人もいれば,低いASD傾向でも診断が必要な人もいる。従って静的表情認知の検討は,ASDにおける社会的コミュニケーションの障害の一部しか扱っておらず,表情認知,ひいては他者の情動理解における発達的視点が欠けているといえる。今後は,表情認知の手掛かりとなる文脈情報,および他者情動が表出される運動情報を処理する低次の視覚情報処理過程に焦点をあてて検討する必要がある。
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