Project/Area Number |
10J04709
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Japanese history
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
似鳥 雄一 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2012: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 備中国新見荘 / 名 / 下地中分 / 紀伊国鞆淵荘 / 惣村 / 百姓名 / 成松名 / 集落名 / 地理的分布 / 開発形態 / 紀伊国鞆淵庄 / 惣庄・惣村 / 検注帳・検地帳 / 高野山 / 庄司氏・林氏 / 身分 / 神仏免 / 新田開発 |
Research Abstract |
本研究は中世後期荘園・村落の動向と性格、地域社会全体における位置付けを明らかにすることを目的としている。本年度の成果をまとめると以下の通りである。 (1)備中国新見荘を題材として、鎌倉期~室町初期の検注帳や散用状などの帳簿類の分析により、荘園の主要構成要素である「名」の特質について検討を行った。その結果、新見荘では谷ごとにまとまって分布する集中型の名と、畿内型としてイメージされる散在型の名とが、それぞれ谷間と平地に混在しており、山間部の荘園でも地理的条件によって擬制的な名編成が行われうることを指摘した。一方、在地住民の生活実態を反映した名として、開発形態・立地条件の上で独自性の高い集落を単位とした集落名の成立を挙げ、徴税単位・経営単位という名の二面性が一体化に近づいたものと評価した。 (2)鎌倉期~南北朝期に紛争解決のために行われた下地中分について、まず新見荘の下地中分の形態を復元した結果、基本的には東西分割という従来よりもシンプルな理解が可能になり、荘園経営にとって重大な権益に関わる土地では例外的に入組地があったことを明らかにした。さらにその他の諸事例との比較・検討から、下地中分においてはまず一円的中分という原則・理想が存在するが、それとは別に荘園内の経営拠点や広域的な交通・流通機構の把握をめぐって、入組地が残存、あるいは坪分中分が選択されるという結論を示した。 (3)紀伊国鞆淵荘を題材として、正長元年と天正19年の二点の土地台帳を用いた定量的な分析を中心に、中世後期における惣村の実態と変容について検討を行った。その結果、庄司氏・林氏という有力階層の動向を背景に、荘域の中心部から周縁部へと生産力が相対的にシフトしていたこと、村落の最上層では番頭から庄司氏・林氏へと勢力交替が確かに起こるが、それ以外の構成員についてはフラットな身分構造が保持され、番頭は地下請という自治システムを番頭請という形で受け継いで機能を果たし続けたことが,明らかになった.このように物村としての性格・機能が中世の終わりまで維持されたことを強調した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東寺領遠隔地荘園である備中国新見荘について、昨年度から継続していた「名」に関する検討のほか、下地中分の問題に関しても先行研究に修正を迫る成果が得られた。また高野山膝下荘園である紀伊国靹淵荘について、中世後期における惣村の実態と変容を具体的に明らかにするなど、当初の計画以上に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では前記のような成果が得られた一方、近江惣村群についての検討が課題として残ったので、今後は菅浦・今堀など惣村の性格と商業の関係、地域社会における政治的な位置付けなど、惣村文書の分析による解明に取り組むことを予定している。
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