ゾラの小説における「予告」 : 語りの手法と作家の社会思想の関係
Project/Area Number |
10J04849
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
ヨーロッパ文学(英文学を除く)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 翠 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | ゾラ / 自然主義 / 生成研究 / 草稿 / ルーゴン・マッカール叢書 / 予告 / フランス / 19世紀 |
Research Abstract |
今年度は(1)ゾラの長編小説とそれ以外のジャンルにおける語りの手法「予告」の比較、(2)後期作品における予告の変遷の解明という二点を軸として研究を進めた。(1)について、ゾラの短編、中編及び演劇台本を比較した結果、長編小説とりわけ新聞連載小説において、射程が長く反復の多い予告のスタイルが推敲されていったという仮説を裏付けた。また、後年映画化されたゾラの作品を題材に、他ジャンルへの翻案を経た予告の例と原作における例との比較を通して、この手法の普遍的な存在意義を改めて多角的に捉え直した。なおこの研究成果は、10月に韓国釜山大学で行われたAIZEN国際学会で発表ののち、学会誌に採用が確定している。(2)について、『ルーゴン・マッカール叢書』における予告は、真実を語り現在の社会を糾弾する小説の構成と連動していたが、後期作品とりわけ『四福音書』になると、より良き未来のモデルを提案する形式へと変化する。この変化の兆しは『金』に見られていたが、決定的な創作態度のシフトはドレフュス事件への関与と時期が一致していることを、草稿・書簡・伝記研究から突き止めた。彼が事件に際して発表した『弾劾する』は、まさしくかつての『ルーゴン・マッカール叢書』の予告者たちがおこなった行為遂行型の糾弾と相似している。しかし、ドレフュスの無罪判決を待たずに一生を終えたゾラは、自己完結的な糾弾行為だけでは事態は好転しないことを身をもって感じ、より良き未来のためにその次元から飛び出して次の行動を提案することを、小説の具体的な手法の中で模索していたと考えられる。以上、ゾラにおける予告の問題を考察するにあたり、サスペンスを生じさせる語りの手法が作家の思想と深い部分で結びついており、その変遷に伴って、現状の糾弾から未来モデルの提案へと形式を変えていったこと、またそれに連動して小説の作法自体をも根幹から変えていったことを明らかにした。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)