Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
抑うつに対する心理学的介入としては,認知療法が効果的であることが示されている。しかしながら,高濃度コルチゾールを伴う抑うつに対しては,認知療法の効果が比較的低いことが示されている(Thase et al., 1996)。そこで,本研究では,コルチゾールが認知療法の効果を阻害する作用機序を明らかにするとともに,その作用機序に基づいて,高濃度コルチゾールを伴う抑うつに対して効果的な心理学的介入を明らかにすることを目的とした。まず,研究実施計画書に記載した通り,昨年度実施されたコルチゾールが抑うつ関連刺激に対する注意バイアスを強める作用を有することを示した研究を,本年度は論文としてまとめ,Applied Psychophysiology and Biofeedback(The Association for Applied Psycho physiology and Bio feedback機関誌)に掲載された。同様に,昨年度実施された,注意バイアス変容訓練が抑うつ気分、およびコルチゾール反応を軽減することを示した研究が,Japanese Psychological Research(日本心理学会機関誌)に採択された。これらの研究は,研究実施計画に記載された通りに遂行されている。さらに,ストレス誘導性のコルチゾールの作用を検討する研究を実施する際に必要となる,コルチゾールを惹起するために必要となる妥当性のある心理社会的ストレス課題に関する現状と問題点を概観した展望論文を執筆し,早稲田大学臨床心理学研究(早稲田大学人間科学学術院心理相談室紀要)に掲載された。また,本年度は,コルチゾールが抑うつ喚起場面に対する適応的解釈に及ぼす影響を検討する実験を実施し,コルチゾールは抑うつ喚起場面に対する適応的解釈の案出を困難にする作用を有することが示された。この研究結果は,現在論文としてまとめられている。以上のように,本研究は概ね申請された研究実施計画の通りに遂行されており,従来の心理療法では難治例とされていた高濃度コルチゾールを伴う抑うつの状態像に対して,有効な心理療法を提供するための示唆を与えた点で重要な研究であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,コルチゾールが抑うつに対する認知療法の効果を阻害する作用機序を特定する目的から,うつ病の診断基準を満たさない健常者,または抑うつ傾向者を対象とした。その結果,抑うつ傾向を対象とした場合には,コルチゾールが注意バイアスと相互に関連を持つことから,認知療法における解釈の操作が成立しない可能性が示唆された。この結果をうつ病患者に対して一般化し,実用性を高めるために,今後の推進方策として,うつ病患者に対する適用を行い,効果研究を行う必要があると考えられる。
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