Research Abstract |
本年度に達成した成果は二つである. 一つ目の成果は前年度,H23年度に達成した,広域WAN環境における高速な仮想マシン(VM)転送技術(VMライブマイグレーションの高速化)の研究を更に洗練させ,国際会議にて発表をおこなった.差分転送という技術は昔からある技術であり,特に目新しいものではない.しかし,今日の広域WAN環境におけるクライアント,データセンタ間では,特定のVMが,特定の理マシン間を往来するという性質がある.そのため,その往来に着目し,軽量で単純なVMの差分転送メカニズムを実現した, 第二の成果は,VMのディスクイメージの重複排除による物理ディスク容量に一時的に削減(圧縮)する機構の研究である.VMのディスクイメージは一般に容量が巨大であり,多くの数十GBになることも珍しくない.これほどの容量を持つファイルを多数格納するためには,今日の高容量な二次記憶装置を持ってしても,多くのコストがかかる.そのため,VMからのデータ書き込みをリアルタイムで解析し,全く同じデータがすでに保存済みであった場合,そのデータは重ねて保存しない機構を開発した.クラウドコンピューティング技術の普及に伴い,単一のデータセンタや計算機に多量のVMイメージが集約されてゆくことが,今後ますます予想されるため,この研究の意義は重要である,この重複排除による四ディスクイメージの一時的な容量削減という手法はすでに多くの研究者によって研究されており,同様に目新しい技術ではない,しかし,本研究ではホストOSや,ファイルシステムに依存しない形でのVM重複排除機構を提案している点が従来のシステムとは異なる点である,特に,H22年度にて達成しているWinKVMにおいて,(Linuxで動作するHybrid VMMであるKVMのWindows移植)WindowsとLinux間で同一のVMMを動作させることに成功している.そのため特定のOSに依存しない形でのVMイメージの重複排除メカニズムを開発することは重要であった.そのため,本研究はH22年度の研究の延長線上としても意義がある.この研究成果をまとめ,国内の研究会で発表を行った. また,リアルタイムに重複排除を行うということは,言い換えれば,VMイメージの更新状況を常に把握しているということである.そのため,このリアルタイムの重複排除システムを,先に上げた,第一の研究である,高速な差分転送メカニズムと組み合わせることで,より柔軟性の高い差分転送メカニズムを提案することができる.この研究については,ある程度の実装,実験は進んだものの,最終年度内に研究報告としてまとまった形で成果を出すことができなかった.
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